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2020 年度 実施状況報告書

鉄酸化細菌を模倣した高彩色無機顔料の新規合成法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 20K21238
研究機関岡山大学

研究代表者

中西 真  岡山大学, 安全衛生推進機構, 助教 (10284085)

研究分担者 押木 俊之  岡山大学, 自然科学研究科, 講師 (80311794)
研究期間 (年度) 2020-07-30 – 2022-03-31
キーワード酸化鉄 / 色調 / 熱処理温度 / テンプレート / 赤色顔料
研究実績の概要

まず、有機分子-金属化合物複合体を形成するのに必要な条件を明らかにするために、アミノ基を含む天然多糖類をテンプレートとして用い、水溶液からの鉄およびアルミニウム等の第二元素の集積を詳細に検討した。溶液の濃度や元素の比率、集積の順序などの作製条件によって、得られる複合体の量と色が異なることが、明らかになった。特に集積効率に関する知見が得られたことが重要な成果である。
次に、複合体をろ過、乾燥した状態(乾燥粉)で種々の評価を実施した。重量分析の結果、15wt%の金属元素の集積が可能であることが明らかとなった。この段階では金属化合物の析出等による集積ではないことが明らかになった。
さらに、作製条件によって得られる顔料の色調をコントロールするために、溶液からの金属集積とその後の熱処理のプロセスを詳細に検討した。上記で得られた乾燥粉を種々の条件で熱処理し、結晶性等の評価を実施した。400℃の熱処理でほぼ単相の試料が得られることが確認され、細菌由来水酸化物よりも反応性が高いことが明らかとなった。熱処理温度が高くなるにつれて、結晶性が高くなることも確認された。
また、色調に関しては、乾燥粉はかなり彩度が高く、赤味と黄色味が同程度であり、熱処理温度が高くなるにつれて、黄色味のみが低下することが明らかになった。一般に酸化鉄顔料の色調は彩度の差はあっても赤味と黄色味を同程度示すのに対して、本材料において赤味が強いのは、焼成に伴う黄色味の低下と関係があることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

金属化合物集積テンプレートの選定に関しては、モデルとなる天然多糖類での詳細な検討が進展したことから、条件に関する知見が集積された。特に集積効率に関する知見が得られたことが重要な成果である。これらの知見を参考にしながら研究計画を進めることで系統的な検討を実施し、特定の因子の集積に及ぼす影響を明らかにできると考えている。これらの検討を進める中で、その集積性能を定量化するための評価手法を確立でき、金属化合物集積テンプレートとして適切な化合物を選別することが可能になると期待される。
また、色調を支配する合成条件の特定に関しては、焼成温度や元素比による結晶性や色調変化の傾向が一通り把握できた。特に焼成温度による結晶性の変化傾向が明らかになったことが重要な成果である。これらの知見に加えて微細組織などの酸化鉄顔料の特性の影響に関して、研究計画を進めることで明らかにできると考えている。これらの検討の結果、色調のコントロールに重要な合成パラメータを特定し、高彩度化の条件を明らかにできると期待される。

今後の研究の推進方策

令和2年度の成果を基に、有機化合物の金属化合物集積テンプレートとしての適用可能性について検討を進める。その際に、アミノ基の特異性に着目し、種々の条件(濃度、温度、時間、pH等)で有機分子による鉄化合物の集積化を実施する。得られた試料に対して、X線回折測定、電子顕微鏡観察等種々の評価を行うことにより、特定の因子の集積に及ぼす影響を明らかにする。これらの検討を進める中で、その集積性能を定量化するための評価手法を確立するとともに、金属化合物集積テンプレートとして適切な化合物の選定を目指す。
また、色調を支配する合成条件の特定についても検討を進める。様々な集積体を種々の条件(温度、時間、雰囲気等)で熱処理することで、酸化鉄顔料へと変換する。結晶性や化学組成に関する知見に加えて、微細組織観察などにより酸化鉄顔料の特性を把握し、色調に及ぼす影響を詳細に検討する。その際に、赤味と黄色味のバランスに着目して、特性と色調の相関を検討する。これらの検討の結果、色調のコントロールに重要な合成パラメータを特定し、高彩度化の条件を明らかにすることを目指す。
これらの結果を基に、特徴的な色調を示すメカニズムを解明し、本系材料の顔料としてのポテンシャルを評価するという目的の達成を目指す。

次年度使用額が生じた理由

国内学会や国際会議への参加を計画していたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により開催中止やオンライン開催に変更されたため、旅費の執行ができなかった。
また、感染拡大により一時的に研究が停止したり、実験補助や解析補助のための研究協力者として予定していた学生の入構が制限されたりしたため、研究代表者と研究分担者で研究を実施する形に計画を変更した。その結果、謝金等の執行ができなかった。
令和3年度はこれらの経費を実験機器、消耗品等の購入や分析依頼等の費用に充て、効率的に研究進展のスピードを上げる計画である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2021

すべて 図書 (1件)

  • [図書] 意匠性を高める顔料技術 3.1.3項 鉄細菌を活かした橙色無機顔料の創出2021

    • 著者名/発表者名
      田村勝徳, 中西真, 高田潤
    • 総ページ数
      320
    • 出版者
      サイエンス&テクノロジー株式会社
    • ISBN
      978-4-86428-242-0

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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