研究課題/領域番号 |
20K21239
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
犬丸 啓 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 教授 (80270891)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 多孔体 / sponge crystal / epitaxial self-assembly / mesocrystal |
研究実績の概要 |
結晶性のナノ粒子が集積し,その集積体全体が単結晶としての秩序性を獲得する現象(Epitaxial Self-Assembly)を犬丸が発見し(Chem. Lett., 1996; J. Phys. Chem., 1997)これを後に「sponge crystals」と命名した(Catal. Surv. Asia, 2006).つまりColfenらが提唱した「メソ結晶(mesocrystal)」(2000)に先駆けて"self-assembly mediated crystal growth"を報告した. 本研究は「スポンジ結晶の化学」を体系化し機能材料としての可能性を開拓するものである. スポンジ結晶は,あらゆる結晶性化合物で形成される可能性があるが,最初に我々が見つけたスポンジ結晶(NH4)3PW12O40のような分子性の無機化合物がそれを形成しやすいといってもいい。Schloglらが初期に報告したCs4PMo11VO40がある.これはナノ粒子の集合を必ずしも介さず,別の原理でスポンジ結晶になる。これと同等の機構が考えられる(NH4)4SiW12O40について,前年度,Ar吸着の解析や分子モデルを駆使し,その細孔構造を分子・原子レベルで解明することに成功した.スポンジ結晶(NH4)3PW12O40の発見(1996)以来,想像していただけであった詳細なミクロ細孔径分布が四半世紀の時を経て実証された. 分離膜を志向したスポンジ結晶の薄膜化の試みを継続的に進め,ピンホールの生成を大幅に抑制する方法を見出すなどの進展が見られた. さらに,今年度,Cs4SiW12O40の細孔構造の調製条件依存性,(NH4)4SiW12O40の過熱による細孔構造変化について,スポンジ結晶の細孔生成メカニズムに基づきながらも予想することが困難な特徴を捉えることに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(NH4)4SiW12O40の詳細なミクロ細孔径分布が四半世紀の時を経て実証された. 分離膜を志向したスポンジ結晶の薄膜化の試みを継続的に進め,ピンホールの生成を大幅に抑制する方法を見出すなどの進展が見られた. さらに,今年度,Cs4SiW12O40の細孔構造の調製条件依存性,(NH4)4SiW12O40の過熱による細孔構造変化について,スポンジ結晶の細孔生成メカニズムに基づきながらも予想することが困難な特徴を捉えることに成功した.
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今後の研究の推進方策 |
分離膜を志向したスポンジ結晶の薄膜化および(NH4)4SiW12O40などの過熱による細孔構造変化,分離膜の基本性能評価についてさらに詳細に検討を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
Cs4SiW12O40の細孔構造の調製条件依存性,(NH4)4SiW12O40の過熱による細孔構造変化について,スポンジ結晶の細孔生成メカニズムに基づきながらさらに詳細に検討する必要が生じ,前年度の後半はその解析に注力した.そのため,分離膜の合成・性能評価検討,および,第一原理計算による構造安定性の評価等による総合的な評価を翌年度に行う必要が出てきた。 詳細な細孔構造変化を種々の条件で合成した試料について測定する.さらには分離膜の性能に大きく影響する「中間層」の合成法の改良を試み膜性能への効果を検証する. 最終的には,エネルギー計算なども取り入れながら総合的な結論を導く. 助成金の使用計画としては,上記の計画の遂行のための実験消耗品として,ガスボンベ(N2, Ar, He, CO2等),試薬類,液体Arなど,計算ソフトウエアバージョンアップ,成果報告(学会発表)の旅費等を予定している。
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