報告者は,CuI4四面体が2次元的あるいは0次元的配列をしている非ペロブスカイト型の銅系複合ヨウ化物が,量子閉込め効果により高い効率で青色発光するという仮説的探索指針を着想した. 2021度までに,CuI4四面体が2次元的に配列した層状構造を有するCu2ZnI4(CZI)ならびにCu2ZnI4-xBrx(CZIB)の薄膜合成と発光特性の調査を行ってきた.これらの取り組みから,CuI4四面体の配列を低次元化することで,発光特性が向上することが示唆された. 最終年度である2023年度は,CuI4四面体が0次元的な配列をした結晶構造を有するCuGaI4(CGI)の合成に取り組んだ.CGIついては1995年に単結晶の成長が報告されて以来合成報告がないため,薄膜の原料となる粉体合成から検討した.CuIとGaI3の混合物に少量の固体ヨウ素を添加したものをガラスアンプルへ封入し,400℃で72時間以上固相反応させると合成できることがわかった.得られた粉体は潮解性があった.そのため,気密ホルダに封入してX線回折測定を行いリートベルト解析した.その結果,1995年に報告されたCGI単結晶と結晶構造ならびに格子定数が一致することが確認できた.しかし, CGI粉体を薄膜成膜装置へ移す際に,粉体が一部潮解するため結晶性のCGI薄膜を得ることができず,発光特性を調査することができなかった. 報告者の仮説的探索指針を検証するには,CuI4四面体が0次元配列した結晶構造の多元系ヨウ化物が必要である.本研究では候補物質としてCuGaI4を選択したが,Ga以外の元素Mを主要構成成分とするCu-M-I系化合物で,(1)CuI4四面体が0次元配列した結晶構造を有し,かつ(2)大気中で潮解しないヨウ化物を見出せば仮説を検証することができる.このような特性を有する多元系ヨウ化物の探索が今後の課題である.
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