研究課題
本研究では、疾患関連点変異を持つヒトのミトコンドリアtRNAウォブル位に見いだされた新規修飾の生合成および分子機能の解明を通じて疾患における新規修飾がもたらす影響について理解を深め、診断・創薬・治療戦略といった応用面にも寄与する貢献を目指している。該当年度においては新規修飾(以降Xと表記)のデコーディング能の解析のため、大腸菌リボソームを用いたコドン結合実験を進めた。tRNAの代替となるアンチコドンステムループ(ASL)について、ウォブル位に天然型修飾の5-ホルミルシチジン(f5C)を持ち37位が正常型のAであるASL(f5C-A)を含む、C-A、f5C-m1G (1-メチルグアノシン:疾患型変異+修飾)、X-m1Gの4種のASLが化学合成され、共同研究先から供与を受けた。標識ASLのリボソームへの非特異な結合が高バックグラウンドの要因になることから、非特異結合したASLの洗浄除去の条件を検討し、またPサイトに配置するtRNAがALSのAサイトコドン結合に干渉する可能性を最小限にするため、PサイトtRNAの濃度を検討した。現在までにm1Gによるコドン結合能の上昇と、Xによる結合能の低下傾向が見られたものの、ミトコンドリアtRNAを模したASLの大腸菌リボソームAサイトへの結合効率が10%程度と依然低いため、再現性の確保も含め、追加検証が必要であると考えている。一方、A4435G変異を持つ患者由来サイブリド細胞を用い、リボソームプロファイリングの実施を別の共同研究先と進めている。
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Methods Enzymol
巻: 658 ページ: 407-418
10.1016/bs.mie.2021.06.012
月刊「細胞」
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