研究課題/領域番号 |
20K21251
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
神取 秀樹 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70202033)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | ヘリオロドプシン / 膜反転 / 静電相互作用 / レチナール / アミノ酸変異 |
研究実績の概要 |
様々な生命現象を支えるため膜タンパク質の膜への配向は厳密に制御されている。光応答性7回膜貫通型タンパク質であるロドプシンも必ずC末端を細胞質側に向けていることが知られていたが、我々は2018年、膜トポロジーが反転したヘリオロドプシンを発見した。ヘリオロドプシンは構造的にも正電荷を内側に持っているが、膜反転の理由はそれだけによるものか、シグナル配列や第一ヘリックスを含むN末端の性質によるものか不明である。そこで本研究においては、アミノ酸変異を駆使して、ロドプシンが膜トポロジーを決める要因を明らかにするとともに、ロドプシンの膜トポロジーを自在に制御することを目指した。2020年度は以下の成果が得られた。 膜トポロジーの検討する際に重要となるのが、タンパク質の構造情報である。我々は2019年に古細菌由来のヘリオロドプシンの立体構造を東大との共同研究により明らかにしたが、本年度は引き続きE108D変異体の結晶構造解析に成功した。これにより、ヘリオロドプシンが示す特異な波長制御機構に関する構造的な示唆を得ることができた。また、全反射赤外分光を用いた解析により、ヘリオロドプシンに亜鉛が特異的に結合することを明らかにした。 一方、系統樹において、ヘリオロドプシンとC末端を細胞質側に向けた微生物ロドプシンの中間的な位置に存在するシゾロドプシンを見出し、これが内向きプロトンポンプの機能を持つことを明らかにしたが、シゾロドプシンはC末端を細胞質側に向けていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
C末端を細胞質側に向けている微生物ロドプシンと、反転したトポロジーを持つヘリオロドプシンのいずれについても理解を深めた上に、進化上の中間にあたるシゾロドプシンがC末端を細胞質側に向けていることを明らかにすることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
研究は順調に進んでおり、当初の予定通りの研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、旅費および謝金が減額したため、研究費を研究目的のため有効に活用すべく、備品の購入を新たに考えた。具体的には、様々な微生物ロドプシンの反応ダイナミクスを解析するため、以下の物品を購入することとした。 ・過渡吸収測定用のレーザー電源 ・過渡吸収測定用の温度調整セル
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