今後の研究の推進方策 |
糖鎖ライブラリーの構築においては、計画書に記載している様に、赤血球を凝集しないIFV株およびパンデミックを引き起こすことが懸念されるトリIFV株に親和性を有する細胞を用いて糖鎖ライブラリーを作製する。そのために、複数のIFV感受性細胞を用いて糖鎖プライマー法での糖鎖解析を実施してきた。今後は、1年目の成果をベースにして発展的な研究を実施する。具体的には、用いる細胞でのIFV感染性を定量的に評価し、各細胞での発現糖鎖とIFV感染性との相関解析を実施する。これにより、特にパンデミックを引き起こすことが懸念されるトリIFV株などとの親和性に優れた細胞株を特定して、その細胞株を用いて糖鎖ライブラリーの構築を目指す。 次に、糖鎖ライブラリーを提示した微粒子を作製してIFVとの凝集アッセイによる検出を実施する。IFV株としてはA型(H1, H3, H5, H7, H9亜型)やB型を用いる。これらのIFV株は研究協力者から既に入手しており、凝集アッセイに必要なウイルス数を増幅した。今後は、これらのIFV株を用いた凝集アッセイを行う。特に、亜型特異的な検出の可能性について検討する。これを達成できれば、当初想定した目標値を超える成果が得られることになる。 SARS-CoV-2でのパンデミックにより、ウイルスの検出手法は世界的に注目されている。PCR法が広く使われる様になってきているが、この方法では遺伝子断片があれば検出されるので、生きたウイルスを検出してはいない。新型ウイルスの発生を監視するサーベイランスの重要性は益々高くなっている。新型IFVの発生に対するサーベイランスでは赤血球凝集アッセイの必要性は継続して存在している。スクリーニングをすり抜けて新型ウイルスを見逃すことのない感染症サーベイランスに活用できる糖鎖修飾微粒子の開発を進めていく。
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