研究課題/領域番号 |
20K21261
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
原田 昌彦 東北大学, 農学研究科, 教授 (70218642)
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研究分担者 |
保科 宏道 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究センター, 上級研究員 (10419004)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | テラヘルツ光 / アクチン / 細胞機能 |
研究実績の概要 |
遺伝子の発現やDNA損傷修復は、ヒストンや核内アクチンの会合と解離のダイナミクスによって制御されている。すなわち、クロマチン構造や細胞核構造のダイナミクスの操作により、様々なゲノム機能の人為的な制御が可能になると期待される。本研究では、特定波長の高強度テラヘルツ(THz)光の細胞への照射によって、このような細胞内のタンパク質会合体のダイナミクスを制御することにより、ゲノム機能を操作する新規手法の技術基盤開発を行うことを目的とした。THz光は、照射している間には細胞に均等に作用させることができ、照射を止めることで作用を容易に解消することができ、また様々な生物に普遍的に利用可能であることが期待される。テラヘルツ光のアクチン水溶液への照射によって、単量体アクチンの繊維状アクチンへの重合が、テラヘルツ光照射によって促進することが示された。さらに生細胞にテラヘルツ光を照射し、細胞内のアクチン動態や細胞周期の変化などを観察した。その結果、テラヘルツ光照射により、細胞質のアクチンの繊維化が促進されることがSiR-アクチン染色した細胞の蛍光顕微鏡観察によって示された。さらに、アクチンの重合と脱重合のダイナミクスが重要な役割を果たしている細胞周期過程である細胞質分裂について、生細胞へのテラヘルツ光照射影響を解析した。その結果、テラヘルツ光照射が、細胞質分裂の進行を阻害することが示された。この発見は、将来的なテラヘルツ光の医療応用にもつながるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
アクチンの重合と脱重合のダイナミクスが重要な役割を果たしている細胞周期過程である細胞質分裂について、生細胞へのテラヘルツ光照射影響を解析したところ、テラヘルツ光照射が、細胞質分裂の進行を阻害することが示された。この発見は、将来的なテラヘルツ光の医療応用にもつながるものであることから、当初の計画以上に本研究が進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
テラヘルツ光の生細胞への照射により、細胞内アクチン動態の変化や、細胞周期への変化が観察されたため、この現象が普遍的なものであることを確認する目的で、初代培養細胞を含む様々な培養細胞や、様々ながん細胞へのテラヘルツ光照射を行い、その影響を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
生細胞へのテラヘルツ光照射によって、細胞周期の進行に影響が観察されるという新規発見があったため、当初の予定にはなかった細胞周期観察条件の検討を行う必要が生じた。そのため、当初に予定していた遺伝子発現の解析を次年度に行うことにしたため、次年度使用額が生じた。
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