研究課題
本年度は、一分子イメージングによるリボソームとRNase Iとの相互作用の測定を行った。mRNAには、リボソームを停止させる配列を挿入した。この停止は一過的であり、一定時間が経過すると、リボソームが翻訳を再開する。これにより、試験管内で「翻訳停止リボソーム」と「翻訳中リボソーム」の両方を観察することが出来る。ここでは、それぞれの分子を蛍光標識する必要があるが、この条件検討に多くの時間を要した。その結果、mRNA上には、短鎖ペプチド抗体の抗原をコードする配列を連続的に配置することとした。抗原が翻訳された場合、試験管内に添加した、蛍光標識した短鎖ペプチド抗体が結合することで、翻訳が進行していることが分かる。また、mRNAの5’末端に翻訳停止配列を挿入した。mRNAの3’末端に相補的な蛍光標識オリゴヌクレオチドを添加し、これがmRNAと結合することで、mRNAを可視化した。これらに、蛍光標識したRNase Iを添加した後、翻訳を開始させた。その結果、リボソームが翻訳停止配列上に存在する際にRNase Iがリボソームに結合し、翻訳が再開されるとRNase Iがリボソームから離れる様子が一分子レベルで観察された。mRNAが途中で切断などを受けることで停止コドンを失うと、リボソームはmRNAに結合した状態で立ち往生する。この状態を解消するためのシステムとして、trans-translationが存在する。このシステムにより、リボソームは各サブユニットに解離し、mRNA上から離れるが、クライオ電子顕微鏡、および生化学的実験から、RNase Iはtrans-translationにより解離した各サブユニット内のrRNAを分解することが分かった。以上から、RNase Iは翻訳を停止しているリボソームと結合することで、活性が阻害されるという当初の仮説が実証された。
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bioRxiv
巻: - ページ: -
10.1101/2023.07.14.548783
Research in Microbiology
巻: 174 ページ: 104131~104131
10.1016/j.resmic.2023.104131