研究実績の概要 |
令和4年度は、令和3年度に確立した手法を用い、農業生物資源ジーンバンクより入手したイネコアコレクション(70品種)について、吸水後の種子の胚から内生細菌のゲノムDNAを抽出した。また、令和2年度に実施したメタゲノム解析によりバイオ肥料原体微生物(Bacillus pumilus TUAT1株)の接種効果である冠根形成の促進が強く現れるイネ品種の胚で高い存在比が確認された内生細菌について、その存在量を胚より抽出したDNAを鋳型としたリアルタイムPCR法により推定した。 イネ70品種における内生細菌の胚での存在量とTUAT1株の接種効果との関連性を調査したところ、両者の間に相関関係は認められなかったが、メタゲノム解析に用いた接種効果に顕著な差異のある6品種では有意に高い正の相関(R = 0.92, P < 0.01)が示された。一方、内生細菌の存在量とTUAT1株の接種効果についてゲノムワイド関連解析を実施したところ、内生細菌の存在量と高い関連性を示すイネ70品種間の一塩基多型(SNP)がTUAT1株の接種効果と高い関連性を示すSNPと同じ染色体領域に存在することを明らかにした。また、そのSNPの近傍には、成熟中のイネ種子で発現が見られる防御応答関連遺伝子が存在することを確認した。 本研究では、イネ品種間に見られるTUAT1株の接種効果の差異と吸水後の種子の胚に存在する内生細菌の存在量との間に関連性があることを明らかにした。また、内生細菌の存在量とTUAT1株の接種効果の両方に影響を及ぼすことが示唆されるイネ側の遺伝子を特定した。当該遺伝子の機能をゲノム編集等により改変し、内生細菌の存在量を増加させることで、TUAT1株の接種効果を高めたイネ品種の育成が可能になることが期待される。
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