研究課題/領域番号 |
20K21268
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
吉田 啓亮 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (40632310)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | 光合成 / 葉緑体 / レドックス制御 / チオレドキシン |
研究実績の概要 |
還元・酸化を基盤としたタンパク質の機能制御であるレドックス制御は、植物の光合成の光に応答したオン・オフ調節に重要な役割を果たしている。光合成の場である葉緑体がレドックス制御系を持つことは半世紀近く前から知られているものの、酸化側(オフ側)の制御を行うためのメカニズムはほとんど明らかになっていない。本研究では、研究代表者が最近成し遂げたタンパク質酸化因子(チオレドキシンライク2;TrxL2)の同定を突破口と捉え、タンパク質酸化システムの全容解明に挑む。光合成の抑制機構を明らかにし、植物は夜どのように眠るのかという問いに対して光合成制御の観点から回答することを目指す。 具体的な研究項目として、(1)どのような葉緑体タンパク質がTrxL2の標的として酸化制御を受けるのか、(2)TrxL2は受け取った還元力をどのように消去しているのか、(3)TrxL2によるタンパク質酸化が植物にとっていかに重要なのかの解明を設定した。2020年度は、ゲノム編集技術によってTrxL2を欠損させたシロイヌナズナを作出した。この株を用いて葉緑体タンパク質の光環境変化に対するレドックス応答を調べ、TrxL2がin vivoのレベルで酸化制御を行う標的タンパク質を同定した。また、その表現型解析により、TrxL2による酸化側のレドックス制御が葉緑体機能に与える影響を明らかにした(論文準備中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的であったTrxL2の標的分子の同定に関しては、in vivoのレベルで制御を受けているものを決定でき、予想以上の進展があったと言える。シロイヌナズナのTrxL2ゲノム編集株も特に問題なく作出でき、すでにこの株の解析を開始している。
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今後の研究の推進方策 |
TrxL2のゲノム編集株をバックグラウンドとして他のレドックス制御因子を欠損させ、葉緑体タンパク質の酸化応答を比較することで、それらのレドックス制御系におけるクロストークを明らかにする。その他、光合成関連パラメータを解析し、タンパク質酸化システムの全体像と光合成制御のおけるその役割を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は出校制限による研究遂行の制約があり、物品費の出費が予定よりもかなり低くなった。次年度はこの分の費用を合算して光合成の測定に必要な備品を購入するとともに、消耗品費、旅費、論文出版費に充てる。
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