研究課題/領域番号 |
20K21270
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
北 将樹 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (30335012)
|
研究分担者 |
森田 真布 名古屋大学, 附属菅島臨海実験所, 助教 (30865184)
大舘 智志 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (60292041)
|
研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
|
キーワード | 食虫動物 / トガリネズミ / 忌避物質 / 化学進化生態学 |
研究実績の概要 |
トガリネズミは唾液に毒を持つ珍しい哺乳類であるが、その筋肉組織には昆虫忌避物質が含まれ、また臭腺には大型哺乳類を忌避させる匂い物質が含まれると示唆される。危険を察すると相手を忌避させる物質を放出する動物は多いが、個体の死後まで忌避作用が継続することは珍しい 。そこで本研究ではトガリネズミ由来の被食、補食に関わる新奇生理活性物質を解明し、トガリネズミ科の適応進化における匂い物質の役割を理解することを目指して研究を行った。北海道厚岸郡浜中町にてトガリネズミのフィールド調査を行い、オオアシトガリネズミとカラフトヒメトガリネズミを捕獲し、唾液腺を摘出した。 その生理食塩水抽出物について酵素活性を評価し、カリクレイン・プラスミン・トロンビンなど血液凝固などに関わるセリンプロテアーゼ様の酵素活性があることを確認した。また飼育していたオオアシトガリネズミおよびジャコウネズミの越年雄個体より臭線を摘出した。臭線の切片を用いて、DART法による揮発性成分の好感度質量分析を検討した結果、主にはカダベリンなど生体に多く存在するポリアミン類が検出されたが、オオアシトガリネズミの組織より分子量89の有機小分子が特異的に検出された。また、GCMS解析により麝香臭として知られるdihydrocivetoneなど既知物質の類似化合物の検出に成功した。今後、検出された化合物の化学合成を行い、天然品とのGCMS、LCMSにおける保持時間を比較するとともに、各種生物活性を確認することで、忌避活性との関わりなど生理的な機能の解明を目指す予定である。また臭い物質の種間比較を行い、進化生態学的観点から新たな知見を得ることを目指していきたい。
|