研究実績の概要 |
これまでに我々は、阻害剤を用いた解析、プロトプラストでの多重遺伝子ノックダウン法を用いた解析から、CKL(Casein Kinase 1-like)遺伝子群はシロイヌナズナの概日時計調節に関わることを報告してきた (Uehara et al., PNAS 2019, Ono et al., Plant Cell Physiol. 2019)。しかし13コピー存在するCKLのどの遺伝子が時計への関与が深いのかは不明である。それに加えて、CKLが時計以外の生理現象に関わることはあまり知られていない。本研究では、改変型CKLを作成し、そのCKLを発現する植物体のプロテオミクスを実施すること、またタグ付きのCKLを発現させ、そのタグ認識する抗体で免疫沈降することなどで相互作用する因子を同定し、最終的にはCKLの関わる生理現象を明らかにすることを目的としていた。 Allen et al., Nature Methods, 2007を参考に、チオリン酸化反応をおこなえる改変型CKLを構造に基づき設計したが、期待通りの反応ができるCKLを作成することができなかった。バックアップの実験として、ckl多重変異体を作成しているが、13全てのCKLを多重欠損した株の作成には至っていない。タグつきのCKLの過剰発現体の作成も困難であったが、発現ベクターやイントロンなどの有無を検討することで、ようやく作成することができた。以上の植物体は、概日時計が撹乱されたかのような形質を示しており、タグを付きのCKLの分子機能が保証された。材料の作成で、当初予想していなかった問題にあたったが、部分的には乗り越えることができたため、今後はこれらの材料をつかって研究を進めていく予定である。
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