研究課題
本研究では、酸化ストレス誘導性細胞死の分子機構の解明を目的として、カタラーゼ欠損株(cat2)で生じるH2O2誘導性細胞死のサプレッサー変異株の単離と原因遺伝子の機能解析を行った。特に、1)サプレッサー遺伝子としてシステインリッチ機能未知タンパク質(CRUP)、2)グルタミン合成酵素2(GS2)、3)アスコルビン酸ペルオキシダーゼ1(APX1)に注目して解析を進めた。1)CRUPの欠損が酸化ストレス誘導性細胞死を抑制することは、さまざまな生理学的条件下で確認できたが、その遺伝子サイズの大きさ故にcDNAのクローニングが困難であり、分子生物学的な側面からの研究を予定通りに進めることができなかった。そのため、CRUPペプチドに対する特異抗体の作出を試みたが、ウエスタンブロットでCRUPの発現を確認することはできなかった。そこで、トランスクリプトームを用いてCRUPの標的の同定を試み、オルガネラ間シグナル伝達と細胞死の関連が強く示唆された。2)GS2と、同酵素と共役するグルタミン酸合成酵素(GOGAT)の解析から、葉緑体におけるGS-GOGATサイクルが酸化ストレス誘導性細胞死の駆動に必要であることがわかった。細胞内レドックス状態、光呼吸中間体、トランスクリプトームの解析により、GS2は光呼吸フラックスの維持により、cat2におけるH2O2生成を促進し、細胞死を誘導することが明らかになった。3)APX1の欠損により、細胞死のトリガーとなるグルタチオン酸化が抑制されることがわかった。同酵素と共役するデヒドロアスコルビン酸還元酵素(DHAR1)の機能を合わせて解析することで、APX1-DHAR1の共役がグルタチオン酸化システムとして酸化ストレス誘導性細胞死の発動に関与することを証明することができた。また、このシステムはDNA損傷応答の抑制に関与することもわかった。
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