研究課題/領域番号 |
20K21279
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
青井 議輝 広島大学, 統合生命科学研究科(先), 准教授 (40386636)
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研究分担者 |
村上 千穂 安田女子大学, 薬学部, 助教 (50649077)
中尾 洋一 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (60282696)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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キーワード | Nitrospira / 休眠・覚醒 / 非休眠株 / 分離精製 / コロニー形成 |
研究実績の概要 |
本研究では,門レベルで難培養性を示すNitrospiraの純粋菌株を難培養性微生物のモデルとして用いて,未知増殖制御メカニズムを発見し解明することを目的にする。具体的には、1)未知覚醒因子の発見,2)コロニーを形成しない理由の解明、3)発現遺伝子の網羅的な比較解析を行う。すなわち未知なる増殖制御メカニズムについて統合的に明らかにすることを目的としている。本年度は主に、Nitrospiraの休眠状態に着目した解析を中心に行った。 前年度までにおいて、休眠しない菌株の出現が確認され、さらに非休眠株と休眠株の両者を安定して培養することができるようになった。今年度は、両者の生理学的・形態学的な相違と、休眠状態とはどのような状態なのかということについて詳細な解析を進めた。休眠株(オリジナルな株)と非休眠株の大きな違いは、休眠株が培養中に強固で密な凝集体(最大で大きさ1mm程度)を形成するのに対して、非休眠株は各細胞が分散状態で存在する傾向にあり、凝集してもふわふわとした弱い凝集体であることが判明した。飢餓状態(休眠誘導)に長期期間晒して細胞密度と回復率を追跡したところ、飢餓状態に移行後1カ月程度で菌体数は1/10程度に減少したものの、それ以降100日以上ほとんど菌体数が変化しないことから、休眠状態においてNitrospiraは長期間菌体を安定して保つことができることが示唆された。一方で、休眠状態からの回復率は飢餓状態の期間が長くなるにつれ、徐々に低下することが判明した。非休眠株の場合、休眠株に比べて飢餓期間の初期における細胞数の現象が著しいことが判明したが、1/10程度に減少した後の減少率は非休眠株と差がないことが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
休眠現象について新しく重要な事実を発見することや、変異株との表現型に明らかな相違がみられるという成果をえることができたが、休眠・覚醒現象をつかさどる因子(覚醒因子)の分画についてはまだ進めることができていない。また比較ゲノム解析のためのサンプル調整が想定外に難しく(菌体を大量に培養することが困難なため)次年度に持ち越したため上記の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
研究の全体計画は以下の内容(項目)から構成されている、1)Nitrospiraの未知覚醒因子の探索(目的化合物の分離と同定),2)休眠と覚醒状態の遺伝子発現パターンの比較解析,3)固体培地上でコロニーを形成しない理由の解明、である。本年度休眠状態の理解が進んだものの、1)および2)はまだ途中段階であるため、今後は項目1)および2)に注力して研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由 前述のとおり、今年度はゲノム解析や遺伝子解析などが進められない状況であり、化合物の分離精製や遺伝子発現解析などに必要な経費が想定よりも少なくなったため消耗品などの購入が少なくなり、当該年度の支出が少なくなり次年度使用額が生じた。 計画 当初の計画通り、全ての検討項目(遅れが生じている部分も)を実施しその実験経費を次年度以降に計上する予定である。
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