持続可能な「再生可能エネルギー」の確保は、人類が解決すべき最重要課題の一つであり、国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」の一つにも掲げられている。太陽光発電や風力発電、バイオマス発電などすでに実用化されたものも多く存在するが、すべての人類が持続的に電力の恩恵を受け続けるためには、新たな電力シーズの発掘・探索は不可欠である。本研究では、新たな電力シーズの発掘・探索を目指して、光合成で得た光エネルギーを電気エネルギーに直接変換する「光合成発電デバイス」の作製に挑戦した。 今年度は、固体電極への電子伝達能を評価するため、マイクロ分析セルおよびポテンショスタットを用いてフェレドキシンからグラファイト電極への電子伝達測定の条件検討を行った。還元剤の種類・量の検討、窒素ガスの注入、および電子供与体の種類・量の検討を行い、様々な条件下で電流-電位曲線を解析し、酸化還元特性を調査した。その結果、この系で電子伝達を検出するには精製タンパク質濃度が十分ではないと判断し、再度フェレドキシンおよびフェレドキシン-NADP還元酵素(FNR)を再度大量精製することとした。 一方、昨年度に引き続き、液相におけるフェレドキシンからOmcZへの電子伝達条件をさらに検討した。その結果、液相における電子伝達は再現よく検出できるようになった。OmcZはc型シトクロムであるが、フェレドキシンから精製シトクロムcへの電子伝達を測定する際に用いる標準的なシトクロムc濃度の半分以下の濃度でフェレドキシンからOmcZへの電子伝達が検出できた。したがって、フェレドキシンからOmcZへの電子伝達効率は十分に高いと判断でき、光合成発電デバイスのパーツとなりうる性能を示した。
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