研究課題/領域番号 |
20K21286
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
甲斐 建次 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (40508404)
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研究分担者 |
岡澤 敦司 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (10294042)
谷 修治 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (80405357)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | 低菌密度 / クオラムセンシング |
研究実績の概要 |
低菌密度時とは、「異種微生物との戦い」において極めて不利な状況である。このような時に産生・分泌する物質には、重要な生物学的機能があるはずである。グラム陰性細菌は、菌密度の増加に伴って遺伝子発現を制御するクオラムセンシング(QS)機構を有する。本研究では、QS欠損株を用いて疑似的に低菌密度状態を作り出し、その時に産生される二次代謝産物とそれらの生物学的機能を解明する。すなわち、低菌密度における異種微生物間の化学的攻防を世界で初めて明らかにする。 青枯病菌のQS欠損株において顕著に蓄積し、しかも真菌類に対して二次代謝産生抑制効果を示す物質が存在することが分かった。QS制御に関わる遺伝子の欠損株のほぼ全てにおいて、この活性が認められたことから低菌密度における重要因子であると位置づけた。しかし、とても極性が高く、さらに安定性もそれほど高くないことから精製が難しい状況に陥った。それを改善する方法として、ある誘導体化を実行したところ、通常の逆相カラムによる精製が可能となり、精製度の上昇と収量の確保に大きな目途がついた。今後はより大量の培養物を調製し、本因子の同定を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
QS欠損株を用いた疑似低菌密度培養で、真菌類に対して二次代謝抑制効果を示す物質を発見し、単離に向けた道筋を大方作り上げることができた。特に、取り扱いが難しいことが予想された本因子について、有効な誘導体化法を見出した点は大きい。
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今後の研究の推進方策 |
低菌密度で特異的に産生される真菌二次代謝抑制因子を単離し、NMRを中心とした構造決定を行っていく。さらにそれらが達成できたらならば、その化合物を真菌類に処理し、作用機序に関する知見を蓄積していく。仲間が十分にいない状況下で遭遇する、本当の異種微生物間の化学的構造を世界に初めて示していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響を受け、研究分担者の岡澤の研究室がたびたび活動禁止・活動自粛となり、計画的な予算執行が難しくなった。今年度は、コロナの影響を考慮した上で、計画的な予算執行に努める。
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