研究課題/領域番号 |
20K21291
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
杉本 真也 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (60464393)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | アミロイド / 機能性アミロイド / 腸内細菌 / Curli / 分泌装置 / スクリーニング / パーキンソン病 / アルツハイマー病 |
研究実績の概要 |
前年度までの研究により、パーキンソン病患者において優位に増加することが報告されているCatabacter属細菌の機能未知タンパク質が、大腸菌の機能性アミロイドCurliの構成タンパク質CsgAと低いながらも相同性を示すことを見出し、本タンパク質をCatabacter amyloid-like protein A(CalA)と命名した。CalA遺伝子にCsgAのシグナルペプチド(1-20)および外膜輸送タンパク質CsgGの認識部位(21-43)を連結したキメラ遺伝子を合成し、大腸菌で複製可能なプラスミドのIPTG誘導型プロモーターの下流に連結することで、CalA発現プラスミドを構築した。
2021年度は、大腸菌のCurli分泌機構を応用した機能性アミロイドの評価系を確立することを目指した。Curliの産生をネガティブに制御する因子を欠損させることで、機能性アミロイドの産生量が増加すると予想し、ペリプラズムにおいてCsgAの分解に関わるペリプラズム局在プロテアーゼを3種類欠損させた株を作製した。次に、この株から、Curliの産生を転写レベルで抑制する転写因子を欠損させた多重遺伝子欠損株を作製した。この株にCalA発現プラスミドを導入し、コンゴーレッド含有培地上でアミロイド線維の産生を評価した。その結果、CalA発現プラスミド導入株のコロニーが微弱ながら赤色を呈した。Alpha-Fold 2を用いてCalAの立体構造を予測したところ、CalAのN末端は天然変性領域であり、C末端側に4本のβストランドからなるβシート構造を形成することが示唆された。そこで、CalAのC末端ペプチド(CalA-C)を化学合成し、アミロイド線維を形成するかを検証した。その結果、チオフラビンT蛍光の増大が認められ、透過電顕観察により、枝分かれのない線維構造を形成することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、大腸菌のCurli分泌システムを改変し、より効率的に機能性アミロイドの産生を評価できる実験系を構築した。そして、パーキンソン病患者に豊富に存在するCatabacter属細菌の機能性アミロイド候補タンパク質CalAを大腸菌で異種発現することで、菌体外に分泌されたCalAがアミロイド線維を形成する可能性を見出した。次に、立体構造予測にもとづき、アミロイド線維を形成する可能性が高いCalAのC末端側ペプチド(CalA-C)を化学合成し、精製標品を得た。チオフラビンT蛍光測定や透過電顕観察により、CalA-Cがアミロイド線維を形成することが強く示唆された。以上のことから、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、CalA-Cがアミロイド線維を形成しやすい条件(ペプチド濃度、温度、時間、バッファー組成など)を精査する。チオフラビンT蛍光測定や透過電顕観察に加え、CalA-Cの二次構造をCDスペクトルを用いて解析する。また、CalA以外の腸内細菌由来機能性アミロイドの探索を実施する。これらの腸内細菌機能性アミロイド候補タンパク質が、真にアミロイド線維を形成することが確認された場合は、線虫のアミロイドーシスモデルを用いて、疾患発症に与える影響を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症蔓延のため、予定していた学会への参加を取りやめた。また、CalAがアミロイド線維を形成するという確証が得られなかったため、線虫を使った実験を実施しなかった。これらの理由により、次年度使用額が生じた。
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