本研究の目的は、特定の腸内細菌が産生する機能性アミロイドが腸管などの末梢組織から中枢神経や全身に移行し、宿主のアミロイド前駆体タンパク質の構造変換を触媒することで、神経変性疾患を発症させるという新たな仮説を検証することである。
前年度までの研究により、健常者に比べて神経変性疾患患者で優位に増加することが報告されているCatabacter属細菌の機能未知タンパク質が、大腸菌の機能性アミロイドCurliの構成タンパク質CsgAと低いながらも相同性を示すことを見出し、本タンパク質をCatabacter amyloid-like protein A(CalA)と命名した。Alpha-Fold 2を用いた立体構造予測に基づき、アミロイド線維を形成する可能性の高いCalAのC末端ペプチド(CalA-C)がチオフラビンT陽性の線維状凝集体を形成することと、このアミロイド様凝集体がCalA-C自身のアミロイド線維形成を促進する活性(Seeding活性)を有することを確認した。2023年度は、CalA-Cがアミロイド線維を形成しやすい条件(ペプチド濃度、温度、時間、バッファー組成など)を精査し、リン酸バッファー中で20 μM程度に調製したあと、振とうしながら37℃で保温することで、48時間以内に効率的にアミロイド線維を形成することがわかった。次に、こうして作製したCalA-Cアミロイド様凝集体がアミロイドーシスに関連するアミロイドベータペプチド(Aβ42)のアミロイド線維形成に対してもSeeding活性を示すかを検討した。その結果、CalA-CはAβ42に対してSeeding効果を示さなかったため、CalA-CのSeeding活性は分子種特異的である可能性が示唆された。今後、αシヌクレインやTauなど他のアミロイドーシス関連タンパク質との相互作用を検証していく必要がある。
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