本研究の目的は、アセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)活性制御機構を明らかにし、余剰エネルギーを脂肪として蓄積する分子機構の解明を目指すと共に、ACC二量体やポリマーの構成因子の同定・解析を行うことで、小分子化合物(食品成分や医薬品)によるACC活性制御実現に向けた新たな方向性を提示することである。 転写因子LXRは脂肪酸合成の転写レベルでの制御において中心的な役割を担っている。本年度は、転写因子LXRの活性化によってACCポリマー化が促進されること、さらにその促進にはLXR標的遺伝子であるMIG12が関与することをを明らかにし、原著論文として報告した。具体的には、MIG12をノックダウンさせることで、LXR活性化によるACCポリマー化促進が完全に消失することを示した。さらにMIG12とACCの結合にはMIG12のロイシンジッパードメインが重要であること、また、MIG12とACCとの結合がMIG12によるACCポリマー化促進には必須であることを明らかにした。 次に、食品の廃棄部位の抽出物を用いてACCポリマー化に影響を及ぼす成分の探索を行った。ピーマンやショウガ、キャベツ等の廃棄される部位の抽出サンプルを肝がん由来培養細胞に処理し、MIG12によって誘導されたACCポリマー化が変動するかについて検討した。その結果、ACCポリマー化を抑制する農産物由来の複数成分を見出すことができた。 また本年度は、in vitroでACCポリマー化制御機構の解析を目的として、バキュロウイルス系を用いてMIG12やACC融合タンパク質の発現系の構築を行い、ACCおよびMIG12タンパク質の合成・精製に成功し、ACC活性をin vitroで測定する評価系の構築に成功した。
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