研究課題/領域番号 |
20K21295
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
和穎 朗太 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, 上級研究員 (80456748)
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研究分担者 |
長尾 眞希 (浅野眞希) 筑波大学, 生命環境系, 助教 (80453538)
井上 弦 長崎総合科学大学, 総合情報学部, 准教授 (30401566)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 土壌炭素 / 土壌窒素 / 有機無機複合体 / 団粒 / 生物地球化学 / XPS(X線高電子分光) |
研究実績の概要 |
1)初年度は、当初の計画通り日本で最も優占する農耕地土壌である火山灰土壌(アロフェン質黒ボク土、畑地Ap層)を対象に、炭素(および窒素)同位体標識したグルコースとアミノ酸を添加した培養実験を開始した。 2)また、土壌団粒構造の表面の内部の主要元素の組成や化学形態の変化を評価するための方法論の検討を行った。具体的には、XPS(X線光電子分光法)を用い、土壌粒子表面分析およびArスパッタリングにより数ナノメートルの深度プロファイルに沿った化学組成の変化を調べた。バルク土壌には植物残渣のような有機質粒子から鉱物粒子そして両者が複合体化した団粒の3タイプの土壌粒子が存在する。そこで、比重分画により、土壌炭素・窒素の半分以上が主にミクロ団粒として貯留する中比重画分を分離し、XPSの測定条件検討を行った。 3)具体的には、試料固定手法としてのカーボンテープの是非の検討、およびArスパッタリングの条件検討を行った。炭素(C 1sスペクトル)については、低結合エネルギー側からC-C/C-H, C-O, C=O, O=C-Oの4タイプに分離評価できることが確認でき、バルク試料の固体13C-NMR 分析から得られる炭素の官能基タイプごとの存在量と整合的な結果が得られた。またスパッタリング前後の比較から、表面にC-O結合炭素が局在化している可能性が示唆された。窒素(N 1sスペクトル)については、アミド結合(C-N)が主体であること、Arスパッタリングにより若干のピーク形状変化が起こることが分かった。酸素、アルミニウム、鉄のピーク強度・形状の解析も今後行う計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画にある同位体標識化合物を用いた培養実験に加え、XPSを用いた土壌粒子(ミクロ団粒)表面および深度別の有機物(C, N)および土壌鉱物元素(Al, Fe等)の評価を開始することができた。土壌粒子の主要部分は、微細鉱物などの無機成分と異なる由来・分解過程にある有機成分の集合体(団粒)であるため、XPSによる団粒表面から数ナノメートル深度の化学組成の評価によって、当初の計画以上に団粒内部で起こるC, Nと鉱物の相互作用の理解が進むことが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
XPS分析に関しては測定条件検討がほぼ完了したため、実際の土壌試料を用いた評価を開始する。
同位体顕微鏡での土壌粒子サンプルの評価には、サンプル固定等の前処理を含めた分析条件が非常に重要となる。必要に応じて、本手法に習熟した独ミュンヘン工科大研究グループの協力を得ることを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
培養後のサンプルの物理分画および分画サンプルの前処理や分析に多くの予算がかかるため、初年度の培養実験の準備と実験スタートには最低限度の予算をかけた。XPS分析についても長崎大学の装置を利用することで比較的安価に分析することが出来た。次年度以降は、異なるスパッタリング条件を検討するために、つくば産総研のXPS装置利用を計画している。
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