研究実績の概要 |
1)継続中の黒ボク土を用いた13C, 15N標識グルタミン酸添加培養実験後の各サイズ画分を用いて、ミュンヘン工科大(TUM)グループと共同でNanoSIMS分析を行った。土壌Cの大部分は最大分散後の粘土画分(0.2-2.0 um径のミクロ団粒)に存在するが、培養1か月後の標識C, Nは弱い分散で得られる崩れやすい粘土画分、その中でも有機物被覆率が高い、微細なミクロ団粒中に選択的に貯留することが初めて分かった。 2)上記の黒ボク土、草原土壌、熱帯強風化土壌の連続比重画分を対象にXPSを用いた土壌粒子表面の化学性評価を更に進め、易分解性と考えられる酸素や窒素を含む有機物(OM)とFe, Al, Siが複合体として(耐機械振とう性)団粒の最表層に多く存在している可能性が明らかになった。 3)団粒内の有機物(OM)の多くは活性Al、Feと複合体化して存在すると考えられるが、複合体の安定性には不明な点が多いため、南九州にて2m以上の断面調査を行い、約500年と4600年に埋没した表層土壌の比較を行った。約4千年の違いのある2層位のすべての深度およびサイズ画分(最大分散後)に共通して、OMとピロリン酸可溶性Al+Fe濃度に強い相関があり(OC:metal=13.2+/-3.5, mol:mol)、この相関は芳香族Cより脂肪族Cとで強い、古い層位では複合体はより微細なミクロ団粒に存在することを明らかにし、論文として発表した(Shimada et al. 2022)。また、土壌の乾湿条件が複合体の形成に及ぼす影響評価を、独ZALFグループとの共同研究として行い、湿地土壌中の有機無機複合体は、酸化的な環境ほど微生物分解が進んだOMがFe酸化物と、還元的・酸性な環境ほど分解程度が低いOMが遊離Alと結合して存在することを示した(Nitzche et al. 2022)。
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