3つのベタシアニン生合成酵素遺伝子(CYP76AD1、DOD、5GT)を過剰発現したペチュニア形質転換体において、葉や花にベタニンが蓄積していることが確認された。一方、アントシアニン転写因子の一つであるPhDPL遺伝子を過剰発現させたペチュニア形質転換体では、葉においてシアニジン派生物が蓄積していた。それぞれの個体を自殖して、T1個体を獲得し、後代においても葉で各色素の蓄積が安定していた。アントシアニン高蓄積系統では、著しい生育遅延が見られた。クロロフィル蛍光測定による光合成機能解析では、アントシアニン蓄積またはベタシアニン蓄積したペチュニア形質転換体の葉では、野生型と比較してFv/Fmが有意に低かった。ベタシアニン蓄積系統ではクロロフィル含量が野生型と比較して有意に高かった。NPQは、アントシアニン蓄積、ベタシアニン蓄積、野生型の順で高く、生育遅延の程度と一致していた。これらの結果から、ベタシアニンおよびアントシアニンが特定の波長領域を吸収することで、光合成効率の低下を引き起こしているが、その程度や作用点が植物色素ごとに異なっていると推定された。本システムを用いることで、植物色素の機能差異を明らかにすることが可能であると考えた。 ベタシアニン生合成酵素遺伝子を過剰発現したトルコギキョウ後代において、鮮赤色、濃ピンク色、オレンジ色の花色を有する個体が得られた。それらのT1個体においては、導入した3つの遺伝子が強く発現していた。T1形質転換体の花弁にはアントシアニンとともにベタシアニンが蓄積しており、これまで不可能だった両色素の共存が可能であるあることが初めて証明された。これらの結果から、ベタレイン遺伝子工学により新しい花色を作出可能であることを示した。
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