研究課題/領域番号 |
20K21313
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
藤本 龍 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (60620375)
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研究分担者 |
長部 謙二 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (60751352)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | アブラナ科 / 春化 / 晩抽性 / エピジェネティクス |
研究実績の概要 |
エピジェネティクな修飾に関する阻害剤を処理することで開花に及ぼす影響を調べた。それぞれの阻害剤について複数の濃度を設定してMS培地に添加し、ハクサイの生育に及ぼす影響について調べた。植物の生育に悪影響が出ない条件で最も高濃度となるようにMS培地に添加し、幾つかのハクサイ系統を栽培した。しかし、早期開花を誘導できるような阻害剤を見出すことはできなかった。これら阻害剤のエピジェネティックな修飾に対する効果について調べている。 ハクサイの極晩抽性系統では、FLCの第一イントロンに挿入が見られることが知られている。この挿入領域のDNAメチル化レベルを調べたところ、高度にDNAメチル化されていることが明らかとなった。ヒストン修飾について調べた結果、通常のハクサイ系統では低温処理期間依存的に転写抑制型のH3K27me3の蓄積が見られるが、この系統ではH3K27me3の蓄積が見られないことを明らかにした。これにより、挿入によるDNAメチル化が低温によるH3K27me3の蓄積を阻害する可能性が示唆され、現在、DNAメチル化阻害剤により挿入領域のDNAメチル化の低下を引き起こすことが可能か調べている。 シロイヌナズナを用いて、エピゲノム編集をFLC遺伝子座に誘発するために、コンストラクトの作製を進めた。植物エピゲノム編集用のベクターをAddgeneから購入し、DNAメチル化編集用遺伝子をH3K27me3関連遺伝子(VRN2、MSI1、CLF、FIE)と入れ替える。現在、これらの遺伝子をシロイヌナズナからクローニングし、dCas9と融合し、大腸菌を用いてタンパク質の発現をPAGEやWestern blotにより確認を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
阻害剤の研究は当初の予定どおり、ハクサイに処理したが、期待されたような結果が得られていない。今後、他の阻害剤についても継続して処理していく計画である。 極晩抽性系統ではFLC遺伝子座への挿入領域が高度にDNAメチル化されていることを明らかにした。通常低温により蓄積されることが知られているH3K27me3の蓄積がFLC遺伝子座に見られず、低温処理によるFLCの発現抑制も見られないことを明らかにした。これにより、挿入領域のDNAメチル化がH3K27me3の蓄積を阻害する可能性が示唆され、この可能性について検証している。 エピゲノム編集のためのコンストラクトを作出しており、今後、形質転換体の評価を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
春化応答性を変化することができる阻害剤の探索と、エピゲノム編集による春化応答性を変化させた形質転換体の作出を進める。また、極晩抽性の系統については、FLC遺伝子座のエピジェネティックな修飾と春化応答の関連性について明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
大腸菌を用いてのdCas9タンパク質の発現確認がとれず、コンストラクトの機能確認が遅れているため予定していた植物形質転換体の作製もやや遅れている。dCas9タンパク質が大きいため、大腸菌での発現に最適化が必要だと考えられる。今後は植物の一過性発現により、dCas9及びH3K27me3関連遺伝子の発現を確認する。そのため、植物用ベクターへの遺伝子クローニング用の試薬、一過性発現用の植物の育成、ChIP-PCR用のアッセイキットや抗体(H3K27me3、Hisタグ)などを次年度購入予定である。
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