研究課題
硫気荒原とよばれる硫酸酸性土壌は、強酸性そのものに加え、溶出するアルミニウムの毒性、不溶化する金属元素の欠乏、硫化水素による呼吸阻害など、植物にとって多重かつ強烈な超ストレス環境である。本研究は、硫気荒原に純群落を形成するヒカゲノカズラ科のミズスギの示す特異な超ストレス耐性の解明に取り組む。ヒカゲノカズラ科はシーラカンスと同様にデボン紀に分化した起源の古い生物で、種子植物に基づく従来の常識とは大きく異なるストレス耐性機構を有している可能性がある。また、硫気荒原のミズスギ根の内部には特徴的な真菌が見出されており、未知の植物-微生物間相互作用によりストレス耐性を示す可能性についても追究する。水耕栽培によりミズスギの低pH、Al耐性を評価したところ、pHは3.5以上、Alは0.1 mMまで比較的良好に生育した。Al処理条件下でクエン酸およびリンゴ酸は多量の分泌が確認されず、これらの有機酸はあまりAl耐性に寄与していないことが示唆された。一方で、Alは根の表面、特に根毛に多く分布している様子が観察された。硫気荒原および非硫気荒原において、ミズスギおよびこれと共存する植物について葉身のイオンプロファイルを調査したところ、ミズスギではアルミニウム濃度が他の植物よりも高かった。調査地においてミズスギとコシダの土壌特性を比較したところ、ミズスギ生育地点においてコシダ生育地点より土壌pHが低かった。上限の土壌水溶性Al濃度はミズスギで高く、より高濃度の可溶性Alを含む土壌に適応できることが示唆された。土壌で栽培したミズスギ地上部から直接27Al NMRスペクトルを得た結果、Alは無機モノマー態イオンとしておそらく液胞に隔離されていると考えられた。ミズスギの根圏土壌微生物群集を調査したところ、菌根菌はほとんど見られず、未知の真菌が多くを占めるなど特徴的な群集構造であることが示唆された。
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