研究課題/領域番号 |
20K21320
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
川崎 努 近畿大学, 農学部, 教授 (90283936)
|
研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
|
キーワード | 植物免疫 / エフェクター / 病原性 |
研究実績の概要 |
植物病原菌が、宿主細胞内に分泌するエフェクターは病原菌の感染・増殖に必須であり、病原菌の病原力の根源であると言える。そこで、本研究では、病害防除の観点からエフェクター機能を阻害する新技術開発を行う。本研究では、エフェクターと、エフェクターの標的となる宿主タンパク質の間の詳細な相互作用解析により、エフェクターが結合する宿主因子のドメインを決定し、それをエフェクタートラップドメイン(ETD)として利用する。ETDを植物で発現させ、ETDがエフェクターと宿主免疫因子の相互作用を阻害するかどうかを解析する。得られた成果をもとに、ETDを利用して、病原菌の感染力を弱体化される次世代型の耐病性技術の開発を行うことを目的としている。 植物の重要な病原細菌が属するXanthomonas属やRalstonia属の病原菌は、TALエフェクターをもつ。TALエフェクターは、宿主の核で転写因子として働き、菌の増殖に都合がいい宿主遺伝子を発現させる、最も重要な病原性因子である。これまでに、我々は、TALエフェクターが相互作用するタンパク質ドメインとして、NB-LRR型病原菌認識受容体Xa1がもつBEDドメインを見出している。そこで、細胞内におけるBEDドメインとTALエフェクターの相互作用を詳細に解析したところ、BEDドメインが、TALエフェクター間で保存されているC末端領域と核で強く結合することがわかった。この相互作用は、BiFC解析においても確認できた。さらに、BEDドメインがTALエフェクターをトラップし、病原菌の病原性を抑制するかどうかを解析するために、BEDドメインを過剰発現させたイネおよびシロイヌナズナを作出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
BEDドメインとTALエフェクターの相互作用を詳細に解析し、BEDドメインがTALエフェクターのC末端側と相互作用していることがわかった。TALエフェクターのC末端側は、それぞれの病原菌がもつ十数個のTALエフェクターにおいて保存されており、BEDドメインはすべてのTALエフェクターと相互作用できると考えられる。さらに、BEDドメインを過剰発現するイネとシロイヌナズナを作出することに成功した。
|
今後の研究の推進方策 |
2020年度に作出した、BEDドメインを過剰発現するイネとシロイヌナズナを用いて、Xanthomonas属の病原菌に対する抵抗性を詳細に解析する。病原性抑制の効果が弱いようであれば、病原細菌の感染部位に特異的に発現されるプロモーターを用いて、BED過剰発現体を作成する。また、白葉枯病菌のエフェクターであるAvrXa7は、イネのSWEET14遺伝子の発現を誘導することが知られており、それが白葉枯病菌の病原性における主要な反応であることが分かっている。そこで、BEDドメインの発現が、AvrXa7によるSWEET14の発現を抑制するかを解析することにより、BEDドメインによる病原性抑制効果を分子生物学的に解析する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染症の影響により、学会などが全てオンライン開催になったことから、旅費が使用されなかった。さらに、論文作成にも影響し、その他の予算が使われなかった。2021年度の計画から消耗品費の増額が必要であることから、今回、繰り越した経費は、消耗品費として使用する予定である。
|