ツツガムシ類は体サイズが非常に小さい。またダニ類は一般的にDNA抽出が困難なことが多い。これらのことからことから、1個体から十分な質と量のDNAを安定的に抽出することが非常に困難であった。我々は、DNA抽出の方法を改良するとともに、一般的に用いられるDNAバーコーディング法を改良することにより、種判別に必要とされるミトコンドリアDNAを効率よく増幅することが可能となった。DNAバーコーディング法の改良は、DNAバーコーディング用汎用プライマーについて、Forward配列をツツガムシに合わせて塩基置換させた縮重プライマーにすることと、Reverse配列の3'末端を延長し安定性を増したプライマーにすることによって行った。この改良型プライマーセットを用いて、わが国の主要なツツガムシについて、ミトコンドリアCox1遺伝子の全長を決定し、改良DNAバーコーディング法でPCR陽性となった検体の塩基配列を決定した。さらに、これまでに報告されているツツガムシ類のミトコンドリアCox1遺伝子の塩基配列と合わせて分子系統解析を行なった。その結果、形態学的に同種とされるツツガムシでも遺伝子レベルではいくつかの亜型が存在することが明らかとなった。これにより、遺伝子型の違いと共生細菌種のマッチングを行うことが可能となり、現在、16S rDNAを標的とした細菌叢解析(次世代シークエンサーIllumina Miseqを用いたアンプリコン解析)を行い、ツツガムシの種類別、地域別に、どのような共生細菌が感染しているのかを詳細に解析しているところである。
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