研究実績の概要 |
北海道北斗市七重浜海岸で採集した海砂から、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)を唯一炭素源として増殖可能な分解菌SEA-51株を単離した。rDNA配列解析および顕微鏡観察の結果、本菌はVerticillium様菌類に属することを明らかにした。 SEA-51株は、PHBだけでなくグルコースを唯一炭素源とした培地でも増殖した。しかしながら、培養上清のPHB分解酵素活性は、炭素源としてPHBを加えた場合に限り検出された。この結果から、本菌のPHB分解酵素は、PHBにより誘導発現することが示唆された。 PHB含有培地で培養したSEA-51株の上清をPHBを含むSDS-ポリアクリルアミドゲルに供し、電気泳動後に室温でインキュベートすると、30分後には分子量約150,000に相当する位置に、PHB分解に伴う透明なハローが生じ、時間経過ともに大きくなった。一方、電気泳動前に試料を100度で15分間処理すると、ハローは24時間後でも生じなかったが、クマシーブリリアントブルー染色により、熱処理をしていない試料には見られない分子量約40,000と45,000の2種類のタンパク質が検出された。これらの結果より、本菌のPHB分解酵素は、ホモまたはヘテロサブユニット構造をもち、活性発現には高次構造の形成が必要であると推定された。 PHBを含む培養液の上清から、透析および限外ろ過を用いて分子量が80,000以下に相当する成分を除いた試料を粗酵素液として性状を評価した。その結果、本酵素の至適温度、同pH、および同NaCl濃度はそれぞれ40度、6.0、および200 mMであった。また、55度で30分間インキュベートすると残存活性は半減し、70度以上で同じ処理を行った場合には失活した。さらに、産業利用が進んでいる3-ヒドロキシ酪酸と3-ヘキサノエートの共重合ポリマーに対してもPHBと同等の分解活性を示した。
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