研究課題/領域番号 |
20K21330
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
平野 恭弘 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (60353827)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 樹木根 / 細根 / 地中レーダ / 森林土壌 / 人工林 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、森林生態系の炭素循環を評価するうえで最後のブラックボックスである樹木の「細根」について、成長や枯死、形態などの生態を非破壊で検出し、明らかにすることである。 本目的達成のため、本年度は、目的の1つめである超高周波数をもつ最新式の地中レーダを用い、森林土壌中の「細根の可視化」は可能かどうか?について、昨年度行われた実験の解析を行った。実験は細根直径2 ㎜前後の分岐の無い細根を準備し、森林土壌中深さ5㎝~10㎝程度に埋設、地表面から高周波レーダ探査を行った。その結果、対照とした直径4.6 ㎜の円柱ドライバは明瞭に双曲線が検出された。根については、細根より太い根であるおおよそ直径5 mm以上の根は高い確率で検出できたものの、細根の定義である直径2 mm以下の細い根では検出精度はあまり高くなかった。また分岐のある細根系を、森林土壌中の深さ10 cm前後に埋設して、高周波地中レーダ探査を行った実験では、細根系の分岐を区別できるような明瞭な双曲線波形は得られなかった。 以上の昨年度行った解析結果を踏まえて、その再現性を確保するため、再度、森林土壌中の深さ15 ㎝程度に、分岐の無い直径1 ㎜から10 mm程度の根を埋設して、高周波地中レーダ探査を同じ条件下で行った。その結果、直径5 mm程度の根は明瞭な双曲線波形が得られたものの、それより細い根の検出精度は低下し、昨年度の実験を支持する結果となった。ヒノキ林分一か所の実験結果であるものの、森林土壌中では直径 5mm 以上の根が高周波地中レーダで精度高く検出されることが示唆された。既存の高周波地中レーダでは、根直径5 mm程度の根の検出率は著しく低下するため、超高周波地中レーダではそれらの根を精度高く検出できることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
目的1の超高周波レーダを用いた細根検出の有効性について、土壌や樹種など実験条件等の影響で、どの程度の直径までがどれくらいの精度で検出可能かについて さらなる検証が必要である。目的1をクリアできていないために 目的2の細根形態特性に関する実験に進めていない。
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今後の研究の推進方策 |
目的1の細根の非破壊検出をクリアすることを前提として、目的2の細根形態や生態の検出へと進めることができるため、まずは目的1の超高周波レーダを用いた細根検出の有効性の検証を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
地中レーダのレンタルを予定していた野外調査実験が、コロナ禍の出張規制と調査地の例年以上の積雪による悪天候により 延期としたため次年度使用額が生じた。予定されていた土壌や環境条件の異なる野外調査実験を翌年度に実施する予定である。
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