研究課題/領域番号 |
20K21336
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
小池 一彦 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 教授 (30265722)
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研究分担者 |
小原 静夏 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 助教 (10878276)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | 牡蠣 / 海の肥沃化 / 豊かな海 / 瀬戸内海 |
研究実績の概要 |
水温18~28℃の6段階,光量子量50~500 μmol-photons m-2 sec-1の4段階,計24段階の水温・光の組み合わせを可能にする培養装置を作製し,耕耘区の底泥を培養した。その結果,珪藻Skeletonema属とChaetoceros属は20~24℃,220~500 μmol-photons m-2 sec-1の条件で最も多く発芽し,その範囲以外の水温・光条件では,耕耘による珪藻増加効果が小さくなる可能性が示唆された。 2020年6月15~17日に広島湾北部で海底耕耘を実施し現場調査をおこなった。耕耘直前から直後にかけてクロロフィルa量が2.0~8.9倍に増加した。耕耘前の表層で高濃度な窒素とリンが存在したことと,耕耘直後の耕耘由来の底層のリン増加が,植物プランクトン急増のトリガーであると考えられる。耕耘直後に出現した植物プランクトンの内96.1~99.8%(細胞数)が珪藻で,その内79.3~88.6%がPseudo-nitzschia属であった。培養実験で高密度に出現したSkeletonema属とChaetoceros属の細胞数は耕耘直前から直後にかけてそれぞれ水柱平均386倍と90倍に増加しており,耕耘によって巻き上げられた休眠期細胞の発芽・増殖したことが示唆された。 海底耕耘効果を継続的に与えるデバイスとして,海底バブリング・湧水装置も試作した。2機の試作機を広島県安芸津町の牡蠣養殖筏に設置し,クロロフィルの増加効果を見たところ,湧水時(夜間)に表層のクロロフィル濃度が5倍程度に上昇した。ただし,冬季の著しい低温によって海域の表層水の沈み込みが盛んとなり,湧水効果による牡蠣の肥育効果は見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本来,海底バブリング装置は令和3年度に着手予定であったが,東広島市と,試作機器を得意とする業者(古川精機)との協力体制が進み,別予算の補填も受け試作機3台を製作できた。令和3年度は効果実証試験を集中的に行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
海底耕耘は漁業者の自助努力により実施可能であるので,その効果検証は引き続き実施する。海底バブリング・湧水装置は他予算の補填も受けさらに2機を製作予定にしている。これら試作機を用い,海表面が温められ鉛直混合が生じなくなる夏季に実証試験を行う。3倍体牡蠣が主流となった現在,夏場の植物プランクトン不足が深刻である。また、6月以降は稚牡蠣の育成シーズンでもあり,この時期に十分な餌を供給することはその後の牡蠣の生残に重要な意味を持つ。稚牡蠣の採苗不足が頻発する広島湾では、夏場の植物プランクトン増加を期待して海底耕耘を実施しており,本装置はその代替策ともなろう
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス感染症拡大のために,予定していたメキシコへの学会参加を断念した。また,外食産業での需要減による牡蠣の大幅減産により,協力を要請していた漁業者の休業等も重なった。残額は海底バブリング・湧水装置の作製と,オンライン国際学会の参加費等に振り向ける。
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