研究課題/領域番号 |
20K21338
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
智和 正明 九州大学, 農学研究院, 准教授 (30380554)
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研究分担者 |
内海 泰弘 九州大学, 農学研究院, 准教授 (50346839)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | シカ / ナトリウム / 植食動物 |
研究実績の概要 |
近年,日本ではニホンジカの個体数が急増し,農林業被害は甚大であるが,解決の見通しが立っていないのが現状である.本研究は,シカを含む植食動物はナトリウム不足になりやすいことに着目し,1) シカはナトリウム不足になりやすいのか?,2) シカはナトリウムをどこから得て いるのか?という問いに答えることを目的とする.本年度は,基礎的知見を得るために,以下の点を明らかにした. 1) カメラセンサスによるシカの動態解析 北海道道東部の森林域(九州大学北海道演習林)において,トレイルカメラを設置し,その付近に食塩を撒くことで,塩分の誘引効果の検証を試みた.本年度は,トレイルカメラを設置したものの,シカの撮影頻度が極度に低く,塩分の誘引効果を得るために必要な撮影数に至らなかった.このため,過去に演習林内で設置されたトレイルカメラを用いてシカの動態を解析した.このデータは演習林(約3700 ha)に8地点,5年間(2011-2015年)のモニタリングデータであり,シカの動態を解析する上で貴重な基盤データである.解析の結果,年間の撮影回数に地点間の変動が大きいことが分かった.さらに,早朝や夕方に撮影頻度が多いことが確認された. 2) 環境試料中のナトリウム分析 北海道道東部において,河川水中のナトリウム濃度を演習林内の多地点(約30点)と十勝川流域の複数の河川間(利別川,足寄川,茂足寄川,螺湾川)で解析した.その結果,ナトリウム濃度はどの河川でも季節によってほとんど変動しなかった.一方,空間的には大きな変動がみられ,流域の斜面方位によって渓流水中のナトリウム濃度が異なった.さらに,螺湾川,茂足寄川でナトリウム濃度が高かった.このような変動は,大気沈着や地質の空間分布によるものと推察された.これらの情報は構成する流域内の植物や土壌中のナトリウム濃度を推定するのに役立つと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
トレイルカメラによるシカの撮影頻度が予想よりも低く,塩分の誘引効果の検証ができなかった.
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今後の研究の推進方策 |
塩分の誘引効果の検証が可能な撮影頻度の有する地点を選定する.
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次年度使用額が生じた理由 |
トレイルカメラによるシカの塩分誘引効果の検証の実施が遅れ,そのために当該年度に予定していた植物試料中のナトリウム分析を次年度に行うため.
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