研究課題/領域番号 |
20K21341
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
亀井 一郎 宮崎大学, 農学部, 教授 (90526526)
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研究分担者 |
上村 直史 長岡技術科学大学, 工学研究科, 助教 (50646528)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | 白色腐朽菌 / 細菌 / 共培養 / 複合微生物 / 木材腐朽 / セルロース / リグニン |
研究実績の概要 |
本研究では、白色腐朽菌と細菌との複合微生物系による木質の微生物変換を目標としている。 木質中セルロースの微生物反応による変換 木質中のセルロースを、複合微生物系による微生物反応のみで変換するために、クロストリジウム属細菌と白色腐朽菌との共培養により木質からのブタノール生成を試みた。白色腐朽菌を一定期間培養し脱リグニン処理したコナラ木粉に、液体培地とクロストリジウム属細菌を添加し、ブタノールの生成を試みた。細菌を添加した実験区からはブタノールの生成が観察されたが、その生成量はごくわずかであった。細菌を添加するタイミングが重要であると考えられるため現在再度検討を行っている。 複合微生物系構築による木質中リグニンの分解 低分子リグニン資化性細菌であるSphingobium sp. SYK-6株と数種の白色腐朽菌をPDA培地上で共培養したところ、数種の白色腐朽菌に対して生育阻害効果を示したが、多くは白色腐朽菌の生育に影響を及ぼさなかった。また、低分子リグニン分解性細菌を選抜するために、森林より複数の腐朽材を収集し、バニリン酸を唯一炭素源とした培地による細菌分離と、HPLC分析によるバニリン酸資化能の評価によるスクリーニングを行い、バニリン酸資化性細菌の分離を行った。複数の腐朽材からバニリン酸資化性細菌を得ることができたが、特にカワラタケと考えられる腐朽菌により腐朽された材より多くのバニリン酸資化性細菌を得ることができた。共培養試験を行うための細菌株入手を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
リグニン分解について木粉培地での共培養まで計画していたが、新型コロナウィルス感染症拡大による研究室の活動制限により未達であったため。
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今後の研究の推進方策 |
木質中セルロースの微生物反応による変換 多機能型白色腐朽菌Phlebia sp. MG-60による脱リグニンと糖化発酵を組み合わせた脱リグニン同時糖化発酵プロセスにおいて、ブタノールの生産性を上昇させることが課題である。ブタノール収率が低い理由としてリグニン分解産物の影響や、白色腐朽菌のリグニン分解からセルロース糖化への代謝切り替えを細菌が阻害している可能性がある。細菌添加のタイミングが重要であると考え、好気条件での脱リグニン処理終了後、発酵用液体培地を添加して2から5日後に細菌を添加しブタノールの生産性を検討する。また、乳酸菌と白色腐朽菌との共培養を試み、セルロースの乳酸への変換を検討する。 複合微生物系構築による木質中リグニンの分解 本項目は高分子リグニン分解性の白色腐朽菌と低分子リグニン資化性の細菌との共培養によるリグニンの分解を目標としている。Sphingobium sp. SYK-6株もしくは2020年度に分離したバニリン酸資化性細菌株と、白色腐朽菌を木粉培地で共培養し、木粉中リグニンの分解に対する影響を評価する。木粉の乾燥重量測定による木粉の重量減少率を測定するとともに、Klason法によるリグニン量を測定する。白色腐朽菌の菌糸体量および細菌の量は、リン脂質脂肪酸分析により定量し、それぞれの木粉中での生育をモニタリングする。また、白色腐朽菌単独および白色腐朽菌―細菌共培養後の木粉を有機溶媒で抽出し、GC-MSおよびHPLCで分析を行いリグニン断片の分析を行い、白色腐朽菌による高分子リグニンの低分子化と低分子化リグニンの細菌による資化の存在を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の感染拡大により研究推進が制限されたため、一部の研究を次年度に実施する必要が生じたため。
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