研究課題/領域番号 |
20K21343
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
西田 梢 筑波大学, 生命環境系, 特任助教 (10708374)
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研究分担者 |
石村 豊穂 京都大学, 人間・環境学研究科, 准教授 (80422012)
白井 厚太朗 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (70463908)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | 安定同位体比 / 質量分析計 / 魚類 / 炭酸塩 / 温度復元 / 古環境復元 / 骨 |
研究実績の概要 |
脊椎動物の骨や歯の硬組織はリン酸塩を主成分とし、5-10%の炭酸基を含んでいる。この微量な炭酸塩の酸素安定同位体比は、変温動物であれば生息環境の温度や環境水を、恒温動物であれば体温や環境水を記録するので、その積極的な活用が可能になれば新たな生態情報の抽出が実現できる。しかしながら、魚類硬組織の多くは分析可能重量を満たせないために、これまでは同位体温度計の検証の術がなく、安定同位体比を活用したアプローチが実現できていなかった。本研究では、微量炭酸塩同位体比分析システム(世界で最も微量で同位体比分析が可能)の改良を行い、魚類硬組織(骨・歯など)から炭素・酸素同位体比情報を抽出し、環境・生態復元への貢献を目指す。
2020年度は、骨試料を活用してリン酸塩中炭酸塩の前処理方法や分析プロトコルの検証を行い、炭酸塩の安定同位体比を得る手法を確立することができた。また、骨試料の前処理による同位体比への影響評価を行い、有機物除去を目的とした骨試料への薬品処理では、薬品によっては骨中炭酸塩の同位体比に影響を与えることを明らかにした。骨試料を化学分析に用いる際には、薬品による有機物除去による分析値への影響を十分に検証する必要があることを示した。生物飼育実験試料として、温度飼育実験を実施した魚類個体や温度一定の条件下で飼育した海洋酸性化飼育実験の魚類個体を収集し、分析のための試料の剖出作業や飼育海水の同位体比分析を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は、試料の前処理方法や分析プロトコルの検証を行い、炭酸塩の同位体比を得る手法を確立することができた。また温度情報が既知の魚類個体を収集し、分析のための試料の剖出作業や飼育海水の同位体比分析を実施した。研究は問題なく進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、2020年度に確立した試料の前処理方法や同位体分析手法を基盤として、飼育温度がモニタリングされた2種の魚類飼育個体(温度飼育実験個体、温度一定の海洋酸性化飼育実験個体)を用いて、同位体温度計としての検証を行う。魚類の脊椎骨等の硬組織からデンタルドリルにより粉末試料の採取を行い、微量炭酸塩分析システムを用いて炭素・酸素安定同位体比分析を実施する。得られた分析データを基に、魚類硬組織中に含有する微量炭酸塩の温度依存性や同位体分別の種間差、代謝影響などについて議論を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はCOVID-19の感染拡大に伴い、在宅勤務指示や緊急事態宣言による移動の制限等により、計画していたよりもフィールド調査や分析を目的とした出張、分析用消耗品の使用などが少なくなったため。次年度は、関係機関で協力しながら、早めの時期に分析作業を実施することでしっかりと分析・議論を行いたい。
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