研究課題
多年生樹木は結実年の翌年は休養し,開花・結実せず必要な物質を樹体内に蓄積する.個体の豊凶メカニズムは物質収支モデル(RBM)として知られ,その数理は1次元のテント写像として知られる.本研究ではRBM個体間の結合様式や気象変動によりRBM個体群の多彩な同期挙動を数理モデルとして構築した.個体群の同期メカニズムを,花粉による大域結合/局所結合モデル,気象合図 による同期モデルおよび根系結合や接ぎ木による拡散結合による同期モデルから構成した.これらにより農林業に想定される豊凶現象を説明する主要な同期メカニズムを体系的にモデル化できた.豊凶の時空間同期に関して,兵庫県のブナ,ミズナラ,コナラの広域豊凶データから空間同期現象について位相同期解析を行った.その結果,数kmから500kmにわたる広域で冪則を有する長距離相関の存在を明らかにした.また,カリフォルニアにおける約1万本のピスタチオの収量データに対して位相解析を行い,長距離相関の存在と位相強度分布を検出した.さらに,ケヤキと兵庫県コラナ等の堅果豊凶等と気象データを照合し,気象合図の存在を実証した.また,1万個体の位置情報を用いて2次元結合写像格子によってモデルを構成し,当該圃場の位相同期メカニズムを明らかにした.すなわち,RBM振動子集合が個体群全体に印加される同一のノイズ=共通ノイズと11m程度の近傍個体間における根系結合(拡散結合)の2要素によって時空間同期メカニズムを説明できた.拡散結合の存在を検証するために,ウンシュウミカン宮川早生30個を用いて,シュート接ぎ木による位相同期に関する栽培実験をおこなった.2022年の接ぎ木当年では16個体中15個体が欠果となった.この実験結果は,接ぎ木によって2個体がOFFに斉一的に誘導されたことを示しており,今後新たな作業仮説の構築の必要性を明らかにできた.
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Chaos, Solitons & Fractals
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