研究課題/領域番号 |
20K21352
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
渡邉 紹裕 熊本大学, くまもと水循環・減災研究教育センター, 特任教授 (50175105)
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研究分担者 |
櫻井 伸一 京都工芸繊維大学, 繊維学系, 教授 (90215682)
原口 智和 佐賀大学, 農学部, 准教授 (90346833)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | ウルトラファインバブル水 / 小角X線散乱法 / 農地土壌環境 / 作物生育 / 灌漑排水 |
研究実績の概要 |
本研究は,ナノサイズ超微細気泡(以下,ウルトラファインバブル[ufb]という)の包含量の多いufb水によって,農業・農地の水を含む土壌環境を改善する可能性を開発することを目的にしている.とくに,最近開発された,より微小なufbを多量に含む水を安価で安定的に製造する器具(トルネーダー)の活用に着目している. 研究初年度の研究実績は,3つのサブ課題ごとに以下のようにまとめられる.研究の進捗と成果は,関係者を交えて開催した「ナノバブル研究会」においても検討を行った. ①国内外の既存の微細気泡水を活用した技術と応用事例の利点・課題を分析評価し,ufb水によって土壌環境を飛躍的に改善する可能性を検討し,適用が有効となる場面・条件の絞り込みを行った.ubf水の発生器具(トルネーダー)の製造技術や開発過程について,開発担当者から情報を収集した. ②バブルのサイズや経時変化を含め,ufbの生成と存在形態を最新測定技術で定量的に確認することを試みた.通常の小角X線散乱(SAXS)測定では,ufb発生器具(トルネーダー)によるufb生成が十分確認できず,カメラ長の長い超小角X線散乱(USAXS)測定が必要であることが明らかとなった.このため,次年度にUSAXS測定を大型放射光施設SPring-8で実施することにし,その検討・準備を行った. ③ufb水の土壌中の存在や動態を確認する基礎実験として,ufb存在と水中溶存酸素量及び土壌透水係数の関係を測定し,ufbによる土壌環境改善の可能性の検討を進めている.また,土壌カラムを用いてのufb水による土壌物理化学性の変化と植物生育の関係の精緻な測定の準備を進めた.さらに,実際の農地における実証試験を,佐賀県内の農家の花卉温室で開始し,次年度の詳細な試験の実施のための圃場選定と装置の準備を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実研究計画においては,初年度は以下を進めることになっていた.すなわち,1)研究参加者と関係者が課題と方法を共有する研究会を開催する.また,ufb水の発生器具の製造技術・プロセスを調査・検証する.2)ufb水の利用現場や導入希望農場などを訪問し,ナノバブル水の導入の課題を調査する.3)各サブ課題[①ufb水導入の必要性と効果,②ufb水の発生確認,③ufb水の土壌物理科学性・作物生育への影響]での研究を進める.必要な測定機器の開発や導入を行う.これらは概ね計画通りに進めることができている.
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今後の研究の推進方策 |
次年度(令和3年度)は,以下の当初計画に沿って研究を進める.すなわち,1)継続して,各サブ課題での研究を進める.2)各サブ課題の成果と課題について検討し,統合する会合を継続して開催する.3)各サブ課題の成果と総合評価した結果をとりまとめ,成果として発表する.また,次の段階の研究課題・計画(例えば,科学研究費補助金/基盤研究の申請など)をまとめる. サブ課題①においては,ufb水の実際の農地への灌水適用の可能性を確認するとともに,実証試験を進めるために,開発すべき灌水装置の条件を明確にし,プロトタイプの試作を試みることにする. また,サブ課題②においては,対象としている器具(トルネーダー)によるufbの生成の確認の課題が明らかになったことを踏まえて,カメラ長の長い超小角X線散乱(USAXS)測定を,なるべく早い時期に大型放射光施設SPring-8で実施するための課題申請を行い,年度後半には当該測定を実施して,ufb生成を定量的に確認することにする. さらに,サブ課題③においては,現場への適用と実証試験と並行して,ufb水の土壌環境への影響について,実験室レベルでの精緻な測定を継続する.とくに,植生・農作物生育のある大型土壌カラムを用いて,水動態と土壌物理性の変化に加えて,土壌の酸化還元電位の変化にも着目して,植物生育と肥料成分動態の変化をも分析・評価することを行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって,研究の進め方に若干の修正が必要となり,それに伴う予算執行の変更分を,次年度に使用することにした.現地農場での観測や,技術活用事業所や関係者聞取りなどを次年度に行うための旅費や,そのための基礎実験や現場試験の変更などによる測定用消耗品の調達の経費である.
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