研究課題/領域番号 |
20K21355
|
研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
桟敷 孝浩 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(長崎), 主幹研究員 (10453250)
|
研究分担者 |
耕野 拓一 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (20281876)
|
研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
|
キーワード | 薬剤耐性 / 経済疫学 / 養殖水産動物 |
研究実績の概要 |
人や動物に抗菌剤が効かなくなる薬剤耐性感染症を予防するため、養殖業者による抗菌剤の「適正使用」が求められている。とはいえ、養殖業者が、実際に抗菌剤を「不適正使用」していることを捉えるのは難しい。2021年度は、スリランカにおけるエビの養殖業者に対するアンケート調査から、養殖業者が表明しにくい、抗菌剤に対する知識不足と故意による不適正使用の存在を、それぞれ定量的に解明した。 アンケート調査は、コロナ禍にあり、海外出張が困難なため、スリランカの研究者からの協力を得つつ実施した。データ解析では、養殖業者が表明しにくい、知識不足と故意による不適正使用の存在をそれぞれ定量的に明らかにするため、Item Count Technique(ICT)分析(間接質問法)を適用した。ICT分析は、養殖業者が表明しにくい抗菌剤の不適正使用というセンシティブな質問を直接的に尋ねる代わりに、間接的に質問内の当てはまる項目数のみを尋ねることで、個人情報を秘匿し、より正直な回答を促すことができる。分析の結果、①抗菌剤への知識不足による不適正使用に関連して、「エビに使用する抗菌剤の効能、用法、用量、使用禁止期間の情報を正確に知らない者」が32.0%、②抗菌剤の故意による不適正使用に関連して、「専門家の許可を得ずに抗菌剤を使用する者」が14.0%を占めるものと推定された。以上のことから、スリランカのエビ養殖において、抗菌剤の不適正使用が疑われる現状を、定量的に示すことができた。 なお、台湾におけるエビの養殖業者を対象としたアンケート調査を、コロナ禍のためスリランカと同様に、台湾の研究者からの協力を得つつ進めてきた。しかし、アンケート調査で得られたサンプル数は少なく、途中段階に留まっている。今後、スリランカおよび台湾での研究成果を挙げるためには、研究代表者および研究分担者による現地調査が必要不可欠である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度および2021年度に、スリランカおよび台湾への現地調査を予定していたが、コロナ禍のため、出張できなかったことが理由である。 これまで海外研究者からの協力を得て、養殖業者へのアンケート調査を実施し、スリランカでのサンプル数は確保できたが、台湾でのサンプル数は少なく途中段階に留まった。コロナ禍の状況がおさまり次第、当初計画の通り、研究代表者および研究分担者が海外出張をして、アンケートの継続調査、養殖業者の経営調査、抗菌剤の使用実態および制度対応について、養殖業者および関係機関への現地調査をすることが、今後の課題として残されている。
|
今後の研究の推進方策 |
スリランカおよび台湾では、抗菌剤の適正使用による便益評価に必要な養殖業者の経営収支データを入手する。また、台湾では、エビの養殖業者に対するアンケート調査を継続する。コロナ禍のため、これまでと同様に、スリランカおよび台湾の研究者からの協力を得つつ研究を推進する。 ただし、スリランカおよび台湾の研究者からの研究協力にも限界がある。そのため、コロナ禍の状況がおさまり、現地調査が可能となり次第、当初計画の通り、研究代表者および研究分担者が海外出張をして、養殖業者および関係機関への調査をする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、2020年度および2021年度に予定していた海外出張が延期となったことから、次年度使用額が生じた。コロナ禍の状況が落ち着き、海外への出張が可能となり次第、2022年度に予定している出張と合わせて、台湾およびスリランカに、それぞれ複数回の出張を計画している。
|