研究課題/領域番号 |
20K21356
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高田 健介 北海道大学, 獣医学研究院, 准教授 (40570073)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | T細胞 / 免疫記憶 / 生体防御 |
研究実績の概要 |
過去に感染した病原体が再び体内に侵入すると、より迅速で強力な免疫応答が生じ、病原体は速やかに排除される(免疫記憶)。免疫記憶の本体は、活性化後、長期にわたって体内で維持される記憶リンパ球である。病原体の再感染が起きなければ記憶T細胞は徐々に減少するが、記憶リンパ球の維持を司る分子メカニズムは解明されていない。本研究は、記憶CD8+T細胞に特異的に発現される転写因子Dmrt4に着目し、当該分子が記憶T細胞の維持に果たす役割と分子機構の解明を目的とする。本研究費助成の初年度である令和2年度は、記憶CD8+T細胞の各亜集団におけるDmrt4の発現、ならびにDmrt4の欠損が抗原特異的な T細胞の免疫応答と記憶形成に及ぼす影響を検討した。CD62LおよびKLRG1をマーカーとして記憶CD8+T細胞を3つの亜集団に分け、Dmrt4遺伝子の発現を定量的PCRで検討したところ、CD62L+KLRG1-セントラルメモリーT細胞で最も高かった。また、モデル抗原である卵白アルブミンを特異的に認識するOT-I抗原受容体のトランスジェニックマウスとDmrt4欠損マウスを交配し、卵白アルブミンに特異的なDmrt4欠損OT-I T細胞を作成した。Dmrt4欠損ナイーブOT-I T細胞T細胞をレシピエントマウスに養子移入後、卵白アルブミン発現組換えリステリア菌を感染させ、生体内で抗原特異的免疫応答を誘導した。その結果、記憶期において、ドナーCD8+T細胞の亜集団構成に影響が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
リンパ球の移植実験に対応するため、遺伝子欠損マウスの戻し交配が必要であった。交配に予想より多くの時間を要した。その後の進行は順調である。
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今後の研究の推進方策 |
Dmrt4は性決定に関わるDmrt転写因子ファミリーのひとつとして同定されたが、先行研究は非常に少なく、標的遺伝子も明らかにされていない。本研究では今後、記憶Tリンパ球でDmrt4の制御を受ける遺伝子を同定するため、まず、Dmrt4の欠損によって発現が変動する遺伝子を探索する。
Dmrt4欠損ナイーブOT-I T細胞をレシピエントマウスに移入後、卵白アルブミン発現組換えリステリア菌を感染させ、生体内で抗原特異的免疫応答を誘導する。感染から2ヶ月後、ドナーT細胞を単離し、RNA-seqによる網羅的遺伝子発現解析を行う。また、in vitroでの抗原刺激により誘導された活性化OT-I T細胞に対し、Dmrt4発現レトロウイルスベクターを用いてDmrt4を過剰発現させる。IL-2の存在下で24時間培養後、レトロウイルスベクターに由来するGFPの蛍光をもとに、Dmrt4剰発現細胞を単離し、RNA-seqによる網羅的遺伝子発現解析を行う。以上のRNA-seq解析の結果から、Dmrt4欠損T細胞とDmrt4過剰発現細胞で逆の変動を示す遺伝子を絞り込み、Dmrt4の標的候補とする。得られた候補遺伝子について、定量的PCR解析、Chip解析を行う。
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