研究課題/領域番号 |
20K21365
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松本 安喜 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (90251420)
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研究分担者 |
斎藤 幸恵 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (30301120)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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キーワード | カーボンナノ粒子 / ワクチン / キャリア― / 豚回虫 / リーシュマニア |
研究実績の概要 |
本研究では、グルコースの加熱により安価なワクチンキャリア―の産生を試みる。2020年度は、13.7%グルコース水溶液を200℃で3時間加温し、エタノールおよび蒸留水で洗浄後105℃にて乾燥させ、得られたカーボンナノ粒子(CS)を、さらに900℃で1時間炭化処理を行ない(炭化CS)、一部の試料には最初の5~10分間に空気を吹込み、空気賦活処理を施した(賦活CS)ところ、空気送入による賦活化により表面積の増加が観察された。 2021年度は、グルコース水溶液を190℃で3時間処理し、得られたCSからの炭化CSおよび賦活CSの作製を繰り返し行い、窒素吸着法による表面積の計測および粒子表面のSEM観察により賦活効果を検討した。また、炭化CSおよび賦活CSにリーシュマニアワクチン候補抗原であるTSAを吸着し、抗原吸着CSからの抗原提示について評価した。賦活CSの平均表面積は720.034 m2/gで、炭化CS(590.326 m2/g)の約1.3倍であり、また、リーシュマニア感染防御抗原であるTSAを吸着した炭化CSおよび賦活CSは、マクロファージによる抗原提示が可能であることが示された。 2022年度は、リーシュマニアTSA抗原および豚回虫As16抗原結合CSによるマウス免疫効果の検討を計画した。 【As16結合CS免疫マウスにおける抗As16抗体産生】CSについて、10μg相当のAs16が結合した量をマウスに14日間隔で3回接種し、最終免疫2週間後まで経時的に採血し、抗As16抗体を定量したところ、ELISAにより、As16結合CSを尾根部に免疫したマウスにおいて、アラムアジュバントを用いて免疫したマウスと同等または高値の血清抗As16抗体が検出された。 しかしながら、コロナウイルス対策のため、リーシュマニアおよび豚回虫の感染防御試験を実施するには至らなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナウイルス対策のため、実験時間が制限されたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下の検討を行う。 【CSのワクチン抗原蛋白結合量の測定】ワクチン候補抗原としてブタ回虫のAs16抗原およびリーシュマニア原虫のTSA抗原を用い、炭化CSおよび賦活CSのワクチン抗原蛋白結合量を、燃焼により放出された窒素ガスからの蛋白結合量推定などにより定量する。 【As16結合CS免疫マウスにおけるブタ回虫感染防御免疫誘導能の評価】CSについて、10μg相当のAs16が結合した量をマウスに14日間隔で3回接種し、最終免疫の2週間後にブタ回虫の第3期幼虫(L3)含有成熟卵を経口感染させ、その1週間後にマウス肺に到達したL3を回収し、計測する。回収されるL3数の減少をもって感染防御効果と判定する。 【TSA結合CS免疫マウスにおけるリーシュマニア原虫感染防御免疫誘導能の評価】CSについて、10μg相当のTSAが結合した量をマウスに14日間隔で3回接種 し、最終免疫1週間後にマウス脾細胞を分離し、TSA抗原とともに72時間培養し、培養上清中のIFNγおよびIL4をサンドイッチELISA法により定量し、Th1およびTh2型の免疫誘導について評価する。最終免疫の1週間後にリーシュマニア原虫(Leishmania major)を免疫マウス尾根部に皮内感染し、経時的に皮膚腫瘤病変のサイズを計測し、感染防御効果と判定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
作成したカーボン粒子(CS)に感染防御抗原を結合したものをマウスに接種し、その感染防御効果を検討する実験を2022年度に行う予定であったが、コロナウイルス対策のために実験時間が制限されたため、2022年度内に行えなかった。当該実験用の予算を、2023年度に持ち越し、次年度使用額を用いて行う予定である。
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