研究実績の概要 |
近年、遺伝子改変ニワトリを用いたバイオものづくり技術の高度化が進む。しかし、その樹立には少なくとも8ヶ月以上の性成熟期間を含め約1年半の準備期間が必要であり、さらなる普及には迅速化が課題である。そこで本研究では1.5ヶ月程度とより短期間で性成熟するウズラを代理親としたニワトリ始原生殖細胞を配偶子分化技術の開発について検討した。 まず、これまでに確立した培養法及び遺伝子導入法に倣い、雄性ニワトリ始原生殖細胞に対してGFP及び薬剤耐性遺伝子を導入したGFP発現雄性ニワトリ始原生殖細胞(以下、GFP-cPGC)株を樹立した。次に、発生2日目雄性ウズラ有精卵を準備し、その卵殻を一部除去し胚および血管を露出、その血管にマイクロマニュピレーターを用いてGFP-cPGCを移入した。そして8,12,15日目まで発生を進め、各々のステージおけるウズラ胚を解剖し、実態蛍光顕微鏡を用いて生殖巣の様子を観察した。その結果、発生8,12,15日目のいずれの時点においても、GFP陽性細胞の存在を明らかにした。さらに、GFP-cPGC移入ウズラ生殖巣の免疫組織染色により、ウズラレシピエント生殖巣の一部領域にGFP発現細胞が生着していることを見出した。 これらの結果によりニワトリドナー始原生殖細胞がウズラレシピエント生殖巣に正着する可能性が示唆され、ウズラを代理親としてニワトリ始原生殖細胞の配偶子分化の実現可能性が示された。しかしながら、ウズラ生殖巣におけるニワトリ始原生殖細胞の生着は一部領域に止まっており、また孵化後の交配可能性及び精子の機能性については検討できていないため、さらなる解析が必要と思われる。 まとめると、本研究において異種生殖巣における生殖系幹細胞の移入機構について新たな基礎的知見が得られた。これは遺伝子改変ニワトリを用いたバイオものづくり及び生殖工学の技術発展に資する重要な知見である。
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