ダイニン1は比較的良く解析が行われており、1分子レベルの運動の再構成が成功している。それに比べて、繊毛内輸送を担う逆行性モーターであるダイニン2については1分子レベルの運動の再構成はうまくいっていない。これはダイニン2のリコンビナントタンパク質の発現、精製が困難であるからである。ダイニン2の1分子レベルの運動解析の再構成を目指して、引き続き、クラミドモナスを用いたダイニン2の精製とカーゴであるIFT複合体の精製を試みた。クラミドモナスから精製したダイニン2は収量が非常に少ないことがわかった。そのため、GFPやアフィニティータグでラベルするダイニン2サブユニットの種類や位置を変える試みなどを実施した。現在までのところ、どのような位置にラベルを入れてもダイニン2の収量が極端に少なかった。しかしながら、1分子レベルの運動解析を複数回行うことができるレベルの量を回収することには成功した。IFT複合体についても必要最小量の精製は達成できたが、まだ収量に改善の余地があると考えられた。 また、コントロール実験としてダイニン1との比較をするためにダイニン1複合体と結合タンパク質であるダイナクチンの発現と精製を試みた。こちらに関してはこれまでにすでに論文で報告されていた通りではあるが、巨大複合体であるリコンビナントヒトダイニン1複合体をsf9細胞で発現し、精製することにした。さらに新たにヒトダイナクチン複合体をsf9細胞で発現し、精製する系を確立することに成功した。当初の目的のためのコントロール実験の一環ではあるが、ヒトダイニン1複合体-ヒトダイナクチン複合体の完全な再構成ができると期待される。
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