研究課題/領域番号 |
20K21380
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
松永 康佑 埼玉大学, 情報メディア基盤センター, 准教授 (60464525)
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研究分担者 |
舘 知宏 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (50586740)
堀山 貴史 北海道大学, 情報科学研究院, 教授 (60314530)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | ウイルス外殻 / カプシド / タイリング / 準等価理論 |
研究実績の概要 |
本研究はウイルス外殻の構造について、Casper and Klugの準等価理論による展開図を近似して正二十面体を作るアプローチとは対照的に、そもそも球面上を敷き詰めることのできる部品構造(コートタンパク構造)のパターンは何か?というタイリングの観点からウイルス外殻を調べ、外殻構造の構成とデザイン原理の理解を深化させることを目的とする。去年度は球面上のタイリングについて考察し、平面を埋め尽くすためのタイリング理論でわかっている部品構造の対象軸のうち6回対称軸を5回対称軸とみなすことで正二十面体のタイリングへと近似することを考案した。これを用いて準等価理論でT1に分類される外殻構造を観察したところ、外見上は4つの異なるタイリングへ分類できることがわかった。本年度は、去年度に主に外見だけで行ったT1外殻構造のタイリング分類を更に定量化するための研究を行った。まず一つ目に、外殻を構成するコートタンパク質モノマーの不斉炭素原子のデカルト座標を点群として発生させ、去年考案した正二十面体のタイリングを満たす平面を点群へフィッティングし分類するプログラムを開発した。実際に、T1外殻構造の一つのテストデータを定量的に分類できるようになった。二つ目として、剛体ドッキングプログラムを用いてコートタンパクのホモ二量体のドッキング計算を行い、得られたドッキングスコアとホモ二量体のスクリュー軸の関係を調べた。あるT1外殻構造では、スクリュー軸が3回対称軸と2回対称軸となるホモ二量体構造のスコアの成績が良かった一方で、別のT1外殻構造では5回対称軸と2回対称軸の成績が良かった。これは考案したタイリング分類の傾向と一致しており、タイリング分類が単なる見た目の分類だけでなく、構造の安定性とも関わっていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度に引き続き球面上のタイリングの理論面については予想外の進展があり、タイリングと従来のCasper and Klugの準等価理論を組み合わせることで自然な形で拡張し、外殻構造の新たな視点・分類を提供できるようになったと考えている。一方で、当初予定していた準等価理論でT1に分類される構造のモデリングまでは到達していないので急ぎ行いたい。タイリング理論により得られた分類から重要な回転対称軸が絞れるようになったので、より効率的なモデリングができると考えている。また、前半の研究期間で得られた成果をなるべく早い時期に論文として発表したい。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、研究分野も異なり研究場所も離れている3名の研究者による異種混合な研究課題であり、何よりも互いの共通言語や共通のデータフォーマットを構築するためのコミュニケーションを重要視している。コロナ禍での研究打ち合わせとして、SlackやZoomなどのITツールを活用することでスムースに共同研究を行なってきたが、本年度は感染状況が下火の隙間に思い切って初めての対面での研究打ち合わせを行った。その際に、外殻構造データを互いに欲しいフォーマットでやり取りすることができ、研究を一気に進めることができた。次年度も感染状況が下火な時期には対面での打ち合わせを積極的に行い共同研究を推進したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
主に対面での研究打ち合わせのための旅費を計上していたが、コロナ禍により出張が難しかったため。次年度は感染状況も下火になると期待されるため、対面での打ち合わせの機会を増やしたい。
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