研究実績の概要 |
ミトコンドリアにおいては、電子伝達系における化学反応によりH+がマトリックスから膜間腔へ汲み上げられ、内膜を介したH+電気化学勾配が形成される。そして、内膜に存在するH+-ATP合成酵素が、そのH+濃度勾配を利用し、アデノシン二リン酸(ADP)をアデノシン三リン酸(ATP)に変換する。本研究においては、藻類、微生物由来のH+ポンプロドプシンをミトコンドリア内膜へターゲッティングすることにより、光エネルギーを用いて、内膜を介したH+電気化学勾配を作り出し、内在のH+-ATP合成酵素を駆動し、ATP産生を促進することを着想した。令和3年度研究において、顕微鏡コンデンサを水浸対物レンズ(LUMPLFLN40XW, NA 0.8, Olympus)に置き換え、リキッドライトガイドを介して、多色LED光源(SpectraX, Lumencor)と接続することにより、蛍光計測しながら各色光において1.7-15.8 mmW/mm2の強度で照射するシステムを最適化した。前年度に使用していた画像取り込みシステム(AquaCosmos, Hamamatsu)に不具合が生じたため、新たなシステム(HCImage, Hamamatsu)を再構築した。このシステムを用いて、ミトコンドリア内膜トランスロカーゼ複合体結合タンパク質のミトコンドリアターゲティングシグナルTim29[1-90]のC末に微生物型ロドプシンの一種である、光駆動外向きH+ポンプ、archaerhodopsin-T (ArchT)を配位した遺伝子コンストラクト (Tim29[1-90]-ArchT)、ミトコンドリアマトリックスpHセンサー2xCox8-pHujiがIRES2配列を介して共発現するプラスミドをND7/23細胞などの培養細胞に発現し、pHujiの蛍光を計測するシステムを検証した。
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