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2020 年度 実施状況報告書

拡張型心筋症で変異が見られるスプライシング制御因子RBM20の機能の解明

研究課題

研究課題/領域番号 20K21385
研究機関東京医科歯科大学

研究代表者

黒柳 秀人  東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (30323702)

研究期間 (年度) 2020-07-30 – 2022-03-31
キーワード拡張型心筋症 / mRNA前駆体 / 選択的スプライシング / ノックインマウス
研究実績の概要

2020年度は、Rbm20ノックアウトマウスと患者型変異ノックインマウスの表現型解析を行い、いずれもTtn遺伝子の心筋特異的スプライシング制御が失われていることから機能欠損であることを見出した。一方で、ノックインマウスのみが、心機能の低下と心室腔の拡大、致死的な不整脈など、ヒトの患者と同様の重篤な症状を示すことを明らかにして論文に発表した。また、ノックインマウスにおける変異型RBM20が機能獲得変異と考えられることから、その細胞内局在を解析し、心筋細胞の細胞質に顆粒状の構造に存在していることを明らかにした。これらの研究成果は、作製したRbm20ノックインマウスが患者の拡張型心筋症の症状をよく再現する優れたモデル動物であることを示しており、病態発現機構の解明に向けた今後の研究の進展が期待される。
一方、Ttn mRNAについては、RBM20ノックアウトやノックインのヘテロ接合体でも中程度にスプライシング異常が見られたことから、RBM20のタンパク質の量に依存する標的エキソンと、半量でも十分制御可能な標的エキソンに分類されることが想定された。そこで、ノックアウトおよびノックインのホモ接合体およびヘテロ接合体におけるTtn mRNAの配列レパートリーを精度よく明らかにする必要性があり、そのための手段として全長Ttn mRNAを複数の断片に分けてRT-PCRにより増幅するための条件検討を行った。そして、予備実験としてノックインのヘテロ接合体から作製したライブラリについて、長リードシーケンサーによる配列解析を進めている。また、野生型RBM20が濃度依存的にスプライシング制御を行ったり、変異型RBM20が顆粒様構造を形成したりするのに関与するドメインについて、ドメイン全体の欠損やアミノ酸置換の変異体を作製して培養細胞に発現させることで、特定を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

2020年度中に論文を投稿し、採択されて出版に至った点は予定どおりである。
Rbm20遺伝子改変マウスを用いた個体レベルでの変異型RBM20タンパク質やそれと共存する他のタンパク質、RNAの解析については、新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言等の影響により研究のための時間が制約されたこと、利用しているマウス飼養保管施設の老朽化により他の飼養保管施設への移動を行ったこと、マウスの心筋細胞から長鎖mRNAを抽出する方法の検討に想定以上の時間を要したことから、必ずしも想定したスケジュールどおりには研究が進展しているとは言えない。

今後の研究の推進方策

Rbm20遺伝子組換えマウスにおける内在性Ttn mRNAの全長シーケンス解析については、予備実験のシーケンスデータの解析を行った上で、現在手元にあるマウスの全遺伝子型(野生型、ヘテロ接合体、ホモ接合体)についてそれぞれTtn mRNAのシーケンス解析を試みる。一方、最近になって論文報告された、RBM20遺伝子の核局在に影響しない家族性拡張型心筋症変異について、ノックインマウスの作製を進めるとともに、細胞内局在やスプライシング制御機能への影響について詳細に検討している。変異型RBM20と共存するタンパク質やRNAについても同定を行う。野生型あるいは変異型RBM20の機能や局在に影響を与えるドメインについても、引き続き実験的に検証を行う。これらの解析を通じて、RBM20の正常機能やRBM20変異による拡張型心筋症の病態発現機構の解明を目指す。

次年度使用額が生じた理由

マウスを用いた解析については、新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言等の影響により研究のための時間が制約があったこと、利用しているマウス飼養保管施設の老朽化により他の飼養保管施設への移動を行ったこと、マウスの心筋細胞から長鎖mRNAを抽出する方法の検討に想定以上の時間を要したことから、年度内にシーケンス解析の外部委託の費用が発生しなかった。同様に、RBM20の共存タンパク質の質量分析による同定の外部委託についても、試料の調製に至らず、費用が発生しなかった。
2021年度はこれらの実験が軌道にのることで、当初の計画どおりの外部委託を行い、データを得られる見通しである。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2020 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] Mayo Clinic/University of Texas Southwestern/University of Wyoming(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      Mayo Clinic/University of Texas Southwestern/University of Wyoming
    • 他の機関数
      4
  • [国際共同研究] European Molecular Biology Laboratory(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      European Molecular Biology Laboratory
  • [雑誌論文] A missense mutation in the RSRSP stretch of Rbm20 causes dilated cardiomyopathy and atrial fibrillation in mice2020

    • 著者名/発表者名
      Ihara Kensuke、Sasano Tetsuo、Hiraoka Yuichi、Togo-Ohno Marina、Soejima Yurie、Sawabe Motoji、Tsuchiya Megumi、Ogawa Hidesato、Furukawa Tetsushi、Kuroyanagi Hidehito
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 10 ページ: 17894

    • DOI

      10.1038/s41598-020-74800-8

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Dysregulated ribonucleoprotein granules promote cardiomyopathy in RBM20 gene-edited pigs2020

    • 著者名/発表者名
      Schneider Jay W.、Wanek Program Preclinical Pipeline、Oommen Saji、Qureshi Muhammad Y.、Goetsch Sean C.、Pease David R.、Sundsbak Rhianna S.、Guo Wei、Sun Mingming、Sun Han、Kuroyanagi Hidehitoほか
    • 雑誌名

      Nature Medicine

      巻: 26 ページ: 1788~1800

    • DOI

      10.1038/s41591-020-1087-x

    • 査読あり / 国際共著
  • [備考] プレス通知資料「変異型タンパク質の細胞質への蓄積が拡張型心筋症を重症化する」

    • URL

      https://www.tmd.ac.jp/archive-tmdu/kouhou/20201027-1.pdf

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公開日: 2021-12-27  

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