研究課題/領域番号 |
20K21388
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
梅田 眞郷 京都大学, 工学研究科, 名誉教授 (10185069)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 細胞内温度 / 脂肪酸不飽和化酵素 / 膜脂質 / ミトコンドリア / ショウジョウバエ |
研究実績の概要 |
温度は、分子の存在状態や反応性を規定する最も重要な物理量であり、生化学反応を始めとする全ての生命活動が温度により強く影響を受ける。これまで、個々の培養細胞内の温度は、早い熱拡散により細胞外溶液と熱平衡にあり、細胞が自律的に細胞内温度を制御するとは考えられていなかった。しかし、申請者らは、ショウジョウバエ細胞が細胞内温度を感知し、自律的に細胞内温度を制御する未知の機構を有することを見出し、その制御に関わる分子群の同定と機能解析を進めている。 脂肪酸不飽和化酵素は、環境温の変動に敏感に応答して発現が変化し、脂質分子の脂肪酸鎖に二重結合を挿入することにより細胞膜の流動性を一定に保つ恒流動性適応において中心的な役割を担うと考えられていた酵素である。本年度、ショウジョウバエ細胞に発現するΔ9脂肪酸不飽和化酵素であるDESAT1が細胞内温度制御においても重要な役割を果たすことを見出し、その作用メカニズムについて詳細な解析を行った。これまで、細胞内温度の変動は蛍光性ポリマー型温度プローブを用いて計測して来たが、ショウジョウバエ細胞の培養温度に最適化した細胞内オルガネラ移行性の蛍光性タンパク質プローブtsGFPを用いて計測し、DESAT1を介する細胞内温度制御において中心的な役割を果たすオルガネラの特定を試みた。その結果、DESAT1がミトコンドリアの電子伝達経路および形態の制御を介して細胞内温度の調節に関わることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞内温度を制御する主要な分子として脂肪酸不飽和化酵素を同定し、ミトコンドリアがその主な作用点であることを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
DESAT1が如何なる機構で、ミトコンドリア活性・形態を制御し、細胞内温度の制御に関わっているのか、フラックスアナライザーを用いた詳細な解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染拡大のため出張および共同研究がキャンセルとなり、旅費・物品費に関する支出がなかった。 今後、共同研究を再開後に使用する計画である。
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