研究課題/領域番号 |
20K21391
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
菅瀬 謙治 京都大学, 工学研究科, 准教授 (00300822)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | タンパク質-薬剤相互作用 / 難水溶性薬剤 / 解離定数 / in-cell NMR / 19F-NMR / 化学交換 |
研究実績の概要 |
本研究は、[19F-Phe]-FKBP12と19F標識ピメクロリムスまたは19F標識ラパマイシンを生きた細胞内に導入し、その相互作用をin-cell 19F-NMRで解析し、解離定数を決定することを目指すものである。ピメクロリムスとラパマイシンは水に溶けにくい免疫抑制剤である。2020年度は、大腸菌発現系を用いて[19F-Phe]-FKBP12を調製することから開始した。IPTGの添加によってタンパク質発現の誘導をかける30分前にL-Trp・L-Tyr・L-19F-Pheを添加することで、[19F-Phe]-FKBP12を調製できる。ただし、FKBP12には5個のPhe残基が存在するが、この5個のPhe残基全てを19F標識するのが難しく、4個のPhe残基が19F標識されたFKBP12がわずかに混入した。そのため、発現誘導のタイミングと培養時間の最適化を行った。しかし、発現誘導のタイミングと培養時間を振っても19F標識率はあまり変化しなかった。ただし、大腸菌の濁度(OD600)が0.8で発現誘導後の培養時間が4-6時間という条件のときにタンパク質の収量が高くなることが分かった。そこで、とりあえず標識率が完全ではないものの得られた[19F-Phe]-FKBP12を用いて19F-NMR測定を行い、標識の不完全さが定量的な解析に影響を及ぼすか否かを評価した。この結果、各19F-NMRシグナルが割れたり肩が生じたりすることはなかった。すなわち、この結果から19F標識が不完全であったとしてもFKBP12の構造が一樣であることが示唆される。定量的なNMR解析ではシグナル強度ではなく緩和速度を解析するため、今回の19F-NMR測定の結果から、FKBP12の19F標識が不完全であったとしても今後の解析には問題を生じないであろうと結論づけた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度はコロナの影響でとくに前期は正常に研究活動を行うことができなかった。また、上述したFKBP12の19F標識の不完全のため、19F標識の最適化の実験に時間を取られた。これらの理由で進捗状況に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
[19F-Phe]-FKBP12を調製できることが分かったため、今後は薬剤のピメクロリムスを有機化学的に19F標識する。ピメクロリムスの19F標識が困難な場合は、ピメクロリムスと同様にFKBP12と結合するラパマイシンの19F標識を試みる。この19F標識薬剤の調製が完了すれば、まずはin vitroの系で19F-NMRによりFKBP12-薬剤相互作用の解離定数を決定する。その後、生きた細胞に[19F-Phe]-FKBP12と19F標識薬剤を導入し、19F in-cell NMRによってその相互作用の解離定数を決定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響と[19F-Phe]-FKBP12の調製の遅れのために薬剤の有機合成的実験を実施できなかった。この実験ができなかったせいで、次年度使用額が生じた。2021年度にこの薬剤の有機合成も含めて実験を進めていく。
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