生命現象で主要な働きを担っている膜タンパク質の多くは、ダイナミックに動くことで機能を果たしている。そのため、生命現象を理解するには、膜タンパク質の構造変化の過程を解明することが必須である。X線自由電子レーザーは次世代のX線として開発され、日本ではSACLAで利用できる。このX線自由電子レーザーを利用した時分割測定は、タンパク質の触媒反応や構造変化などの動きを連続的なスナップショットとして、高分解能でかつフェムト秒レベルでの動きを解析できる従来にはなかった技術となっている。光感受性タンパク質や光に反応するケージド化合物が利用できるタンパク質では、光の照射により結晶内のタンパク質の反応を一斉に開始することで時分割測定が可能となっている。 Gタンパク質共役型受容体は、細胞内に存在するGタンパク質やβアレスチンなどと共役して情報伝達を行い、生命維持に必須な役割を果たす。Gタンパク質共役型受容体は、活性型と不活性型の平衡状態で存在し、作動薬・逆作動薬が結合すると大きく構造変化を起し、それぞれ活性型・不活性型に平衡が偏る。本研究では、光非感受性であるGタンパク質共役型受容体についてX線自由電子レーザーを使った時分割測定を行える環境を整え、Gタンパク質共役型受容体に薬が結合した際の構造変化を解明することを目的とし、検討をおこなってきた。Gタンパク質共役型受容体の時分割測定を行うためには、薬が結合していない状態で結晶を作製し、そこに薬を加えることで動作を開始させる必要がある。しかし、Gタンパク質共役型受容体は薬が結合していない状態では不安定であるため結晶化が困難であった。構造認識抗体やコンストラクトの安定化の検討により、薬が結合していない状態での結晶化・構造解析に成功し、時分割測定のための土台は構築できた。時分割測定を行うためには十分な分解能が必要なため、更に安定化の検討を行っている。
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