研究課題
アミロイド線維は、単純なクロスβ構造が基本構造であるにも関わらず、微視的には構造の多様性が見られる。このように一種類のタンパク質から様々なアミロイド構造が形成される性質はアミロイド線維の構造多形(アミロイド多形)と呼ばれ、異なる病態や感染性をもたらす構造的な要因である可能性が指摘されている。しかし、これを簡便かつ鋭敏に識別できる手法は十分に確立されていない。そこで本研究では、アミロイド線維がヨウ素により多様な色に染まる現象に着眼し、ヨウ素分子をプローブとして、アミロイド多形を簡便かつ迅速に評価する方法を確立することを目指す。さらにこれを利用して、アミロイド多形の毒性への関わりと感染時の構造伝播機構を調べ、病態診断への応用も目指してアミロイド多形のイメージングにも挑戦する。R4年度は、アミロイド原性タンパク質のアミロイド線維数種類についてヨウ素染色を行い、呈色の強弱はあるものの、多くのアミロイド線維でヨウ素染色が可能であることがわかった。さらにアミロイドβペプチドでは、異なる反応条件で生成したアミロイド多形を識別できそうであることと、異なる鎖長間にも異なる色調が見られることを確認した。すなわち、これまでに解析してきたインスリンのように、セルフシーディングやクロスシーディングにより生成したアミロイド線維の構造の保存や変化を追跡する手段として、さらに特定の構造の簡便な同定方法としての応用が見込める。また、研究協力者と共同で行っているチオフラビンTの蛍光寿命測定を継続することでも多形の識別方法の開拓を進展させた。
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