研究課題/領域番号 |
20K21397
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松本 有樹修 九州大学, 生体防御医学研究所, 准教授 (60741519)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | Long non-coding RNA / ポリペプチド / 精子 / 不妊 |
研究実績の概要 |
ゲノムにはlong non-coding RNA (lncRNA)と呼ばれるタンパク質をコードしない長鎖RNAが大量に存在するが、われわれはlncRNAと思われていたRNAから翻訳される新規ポリペプチドを多数同定した [Matsumoto et al., Nature 541: 228-232 (2017)]。われわれの解析の結果、lncRNAとして登録されているRNAの一部は、実際はnon-coding RNAではなくcoding RNAであるということが分かった。 それら新規ポリペプチドのうち、同一遺伝子座の第1エキソンが異なる2つのアイソフォームから翻訳される2つの新規ポリペプチドに着目して解析を進めていくことにした。これらポリペプチドはどちらもVDACと非常に強く結合しており、ポリペプチドを両方欠損するマウスは雄性不妊を示した。以上の結果より、精子形成に必須な2つのVDAC結合新規ポリペプチドを同定した。本課題では、この新規ポリペプチドがVDACをどのように制御しているのかという詳細な分子機構を、(1) In vitro current trace assayと、(2) 結晶構造解析を行うことにより明らかにしていく。 本年度は、新規ポリペプチドとVDACの精製タンパク質を作製して、様々な予備実験を行った。In vitro current trace assayの予備検討として、精製ポリペプチドとVDACを含むリポソームでの色素の取り込み実験を行い、精製ポリペプチド有り無しでの色素の取り込みの変化について検討した。 さらに、この新規ポリペプチドとVDACの共結晶の精製を行い、予備的な構造の解析結果を得ることができた。今後さらに条件検討を進めていくことにより、より精密な構造情報を得る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
新規ポリペプチドとVDACの精製タンパク質を得ることができた。さらにそれらを用いて、In vitro current trace assayと結晶構造解析の予備的結果を得ることができた。以上の結果から、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでに行ってきた予備検討をもとにさらに進めていく。リポソームにVDAC3とポリペプチドを組み込むことが出来たため、今後はさらに発展させてIn vitro current trace assayを行う。 結晶構造解析に関しては、既に予備的な構造の解析結果を得ることができているため、今後条件検討を行うことにより、より詳細な構造情報を取得することを目指す。
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