当該年度では、新型コロナウイルスによる研究活動制限のため行うことのできなかった一部実験と技術開発に着手した。具体的には、マウス胚の紡錘体微小管を標的にその力場を可視化計測できるよう、昨年度までに立ち上げたスピニングディスク型共焦点顕微鏡システムを最適化し、高い時空間精度かつ長時間の蛍光生細胞観察を実現した。DNAオリガミで作製した微小管結合性の力場センサーについては、その内部構造の柔軟性が原因で隣接微小管への架橋局在が制限されたためにより固い構造を持つデザインへの改良を昨年度から継続して進め、新しい型のセンサーの作製と微小管結合能の確認を行った。また細胞内での力場計測の精度を保証するために独立したデザインの計測手法も並行して開発し、生きた胚内における細胞内構造の物性定量を実現した。研究期間全体を通して、研究を開始するためのマウス実験設備の立ち上げとサンプル調製技術の確立、これまで実現が難しかったマウス胚の高時空間精度でのイメージング、DNAオリガミセンサの”のり”となる標的結合部位のコンストラクト作製と最適化、DNAオリガミセンサーの標的細胞骨格への特異的結合、内部自由度が異なるセンサーの作製と特性の評価、を達成した。また生細胞内で細胞内構造体の力学特性を定量する新規技術を確立した。
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