これまでウイルスに関しては病原ウイルスを対象とした研究が多く、地球上に存在するウイルスはほとんど未知の存在と言っても過言ではない。しかしながら、ウイルスは地球上でもっとも個体数の多い、遺伝物質を有する有機体集団である。全てのウイルスは特定の細胞に感染し増殖する。ウイルスと細胞の間では遺伝子の水平伝播と軍拡的進化競争が起こり、これらは進化の原動力となった。多くのウイルスのゲノムを解析することで、ウイルスのみならず、細胞性生命の進化と起源についての新たな理解も得られるだろう。 これまでのウイルスゲノムを探索する研究は、相同性検索によって検出される、既知のウイルスに近縁な種に限られていた。本研究の目的は、1)CRISPR免疫記 憶を利用して相同性検索に依存しない方法でファージゲノムを探索し、さらに得られたゲノム配列を用いてウイルス全体の進化と起源を明らかにすること、2) 古代ウイルス配列決定をおこない、ウイルス進化を年代確立した上で検討すること、である。
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