研究課題/領域番号 |
20K21408
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研究機関 | 星薬科大学 |
研究代表者 |
大竹 史明 星薬科大学, 先端生命科学研究所, 特任准教授 (60447373)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | ユビキチン / プロテオミクス |
研究実績の概要 |
ユビキチン修飾は生体に必須の翻訳後修飾であり、タンパク質恒常性(プロテオスタシス)維持やシグナル伝達、DNA修復など、多種多様な生命現象を制御している。ユビキチンは76アミノ酸からなる小型タンパク質であり、カルボキシ(C)末端グリシンを介して基質タンパク質のリジン残基に翻訳後修飾として付加され、基質タンパク質の運命や機能を変換する。しかし、ユビキチンの機能的多様性はいまだ十分には解明されていない。そこで本研究は、ユビキチンの新たな機能の解明を目的とする。
これまでにトップダウンプロテオミクス解析法を構築し、Higher energy Collision Dissociation (HCD)による開裂によって特徴的なb, yイオンによるトップダウン解析を確立した。モノユビキチンのトップダウン解析により、切断型ユビキチンの存在比を定量した。この結果を裏付けるため、ボトムアップのプロテオミクス解析を試みた。培養細胞からユビキチンを精製し、モノユビキチンをin-gelでのLysC消化を行った。LysC消化によって切断型ユビキチンに特徴的な配列が生成されるため、これをLC-MSにて検出することで、切断型ユビキチンを測定した。さらに、これらのユビキチン断片に対応するペプチド配列をもとに安定同位体標識した標準ペプチドを合成した。このペプチドを用いてparallel reaction monitoring (PRM)法により、、細胞内の切断型ユビキチンの絶対定量に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ユビキチンのトップダウン質量分析の結果を、ボトムアッププロテオミクスによって裏付けることができ、PRM法による絶対定量にも成功したため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに明らかにしたトップダウン質量分析およびボトムアッププロテオミクスによる絶対定量法により、種々の細胞刺激により、切断型ユビキチンの細胞内での量的変動について明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
ユビキチンの絶対定量解析については、これまでに用いていないペプチド配列を用いることから条件検討の困難が予想されたが、予想以上に良好な定量解析に成功した。そのため本年度の使用額にて研究を十分に遂行できた。しかし今後、関連因子の遺伝子ノックダウンや抗体購入などで高額の試薬代が必要になると予想されるため、次年度はこれら解析に必須の消耗品に充てる予定である。
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